23時の恵比寿でナンパされ、バーに行った28歳女。しかし30分後、後悔したワケ

東京に点在する、いくつものバー。

そこはお酒を楽しむ場にとどまらず、都会で目まぐるしい日々をすごす人々にとっての、止まり木のような場所だ。

どんなバーにも共通しているのは、そこには人々のドラマがあるということ。

カクテルの数ほどある喜怒哀楽のドラマを、グラスに満たしてお届けします──。

▶前回:田園調布雙葉出身で、親は開業医の28歳お嬢様。アパレル勤めの彼との付き合いを反対され…


Vol.10 <ブルームーン> 堂島仁美(30)の場合


ビールグラスを模した街灯が、仁美の影を揺らめかせる。

二重になり、薄まり、長く伸び、震え、くっきりと濃くなる。

変化する自分の影をこんなにまじまじと仁美が観察できるのは、もう夜も更けた23時すぎだから。

普段は人通りの多い恵比寿も、平日の深夜は意外に閑静になる。そんなことを仁美が再確認できるようになったのは、この2ヶ月のことだった。もう30歳になるというのに、2ヶ月前まで仁美は、過保護すぎる父に門限20時を強いられていたのだ。

― あの子は本当に気の毒だけど…。私がこうしてまた夜に出られるようになったのは、由紀のおかげね。

妹の由紀が恋人と別れることになったのが、今から2ヶ月ほど前。

姉の目から見ても、あまり大事にされていなかったように見えた恋だ。由紀の恋が終わったことは、仕方のないことだったように思う。

だけど、それがあんな形で──父の命令で無理やり別れさせられたことに仁美も罪悪感を覚えていた。

─ だって、父があそこまで私たち姉妹に対して過保護になったのは…私のせいなんだから。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
前回のお話ではステキなお父さんだと思ったけど、仁美に対しては法律事務所で友人に監視させるとか門限8pmとか、30歳の娘にはちょっとやり過ぎな気も....
2024/08/28 05:3030返信2件
No Name
奥さんいる事がバレた後堂々と指輪してくる龍一もどうなんだろう? 会う度に「恐ろしい毒物」を見せられたら辛いよ。自分の誕生石を裏に埋め込んだとかそんなエピソード話すなよとも思ったし。 まぁ清算されて然るべき。
2024/08/28 05:2723返信2件
No Name
昏睡強盗未遂に不倫。仁美が危なっかしいから、父親も過保護になったのかな。

最後は龍一とお付き合いするきっかけになった因縁の「ブルームーン」を飲み干してお別れ。少し強くなれたのがよかった。
2024/08/28 06:5919
もっと見る ( 20 件 )

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo