前回:「5cmヒールで、会社からお店まではタクシーに乗って…」気合を入れた初デートで男からの思わぬ告白
※次回6/22(土)配信予定でしたが、6/29(土)に変更になりました。「アオハルなんて甘すぎる」ご愛読の皆さま、配信が遅れまして心よりお詫び申し上げます。
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金曜日の22:00過ぎ。門前仲町
門前仲町のビストロでの初めてのデートは、デザートのタイミングになり、私はいちごのクリームブリュレを、伊東さんは、ババ オ ラムというお菓子(ブリオッシュにラム酒とシロップをしみこませたものらしい)を頼んだ。
本当はデザートを食べずに、2軒目に移動するプランだったんだけど、と伊東さんが笑いながら言った。
「宝ちゃん、目がまんまるになっちゃってる(笑)かなりビックリさせちゃったみたいだし、今日のデートはこの店でおしまいにしよう。でも…最後に、もう一言だけ、いいかな」
ゴホンと咳払いをして、居ずまいを正してから伊東さんは続けた。
「今日宝ちゃんと話せて確信した。オレ、本気です。こんなこと言うと重いと思われるかもしれないけど、いい加減な気持ちで付き合いたいって言ってるわけじゃくて。もし付き合ってくれるとしたら…結婚を前提にしたいくらいには本気だから」
「け、け…、け……?」
単語になりきらなかった私の疑問形を、そう結婚、と至極当然でなんでもないことのように形にした伊東さんに、宝ちゃん口が開いちゃってるよと笑われてしまった。
「気軽に期限付きのお試しでとか言っといて、結局プレッシャーかけちゃって申し訳ない。それくらいオレ、誰かに宝ちゃんをとられたくないって思ってるってことなんだよね。でももちろん、宝ちゃんはお試しの気持ちで、全然OKだからね」
なんかオレ支離滅裂になってきてない?と問われても言葉が出ない。
― なぜ、私なんでしょう?
未だに消えないその疑問は強くなるばかりなのだけど、その疑問を口にすることすらおこがましく感じている。心臓はむず痒さで壊れてしまいそうだし、私の顔はきっと今真っ赤だろう。自分の何が伊東さんにヒットしているのか、悲しいかな心当たりが全くないのだから。
― でも…。
茶化したりおどけたりする様子がないその真っすぐさを疑うのは失礼だということは理解できた。だから覚悟を決めて言った。
「伊東さんのお気持ちはとてもありがたいです。でも少し落ち着いて考える時間が私には必要っぽくて…正直にお話しすると、私は元々恋愛があまり得意ではない上に、今ちょっとしたリハビリ中と言いますか…」
― リハビリ中どころか、初恋もまだという疑惑もあるんだけど。
そもそもリハビリなんて言い方、ちょっとカッコつけちゃったかなと思いつつ、まっすぐに気持ちを言葉にしてくれる伊東さんになるべくウソやごまかしのない返事をしたいと思ったのだ。
「でも、あの、伊東さんとお付き合いすることが全く想像できないとか言うわけでもなくて。私も真剣に考えてお返事させていただければと思いますので、ここは一旦持ち帰らせてもらうということで…いかがでしょうか?」
今の精一杯の言葉をつなげたつもりの私に、もちろん!と伊東さんが嬉しそうに笑った。
「どんどん持ち帰って!全く可能性はありませんって、ばっさり即答で断られることも覚悟してたから、持ち帰ってくれるってだけで嬉しいよ。だだもう1つだけ…提案があるんだけど、聞いてくれる?」
......
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この記事へのコメント
しかし、この連載も今後隔週でしか読めなくなってしまうのか......素晴らしいライターさんなので残念。
以前は宝ちゃんと大輝でハッピーエンドかと思ったけど、今は伊東さんと何とかうまく行って欲しい。大輝の気持ちが揺らぎ始めているけれど。
伊東さんでトラウマを上書きしてほしい気持ち半分、大輝くんと友情以上のものを感じてほしい気持ち半分。来週読めないのが残念っ。