
祝開店!"名店育ち"の注目株
ビストロ・エビス
Bistro YEBISU
日常の中で素直に示される、確かな技と熱意。
恵比寿にあるビストロだから、『ビストロ・エビス』。拍子抜けするほどシンプルな名が清々しい。
オーナーシェフの平尾光司氏は『レカン』など、複数のグランメゾンで腕を磨いてきた人物。順調だったキャリアに疑問符が付いたのは『ラ・ブランシュ』に入店したころで、「ずっと大きな厨房にいたんですが、料理が単なる作業になっている自分に気付いた」。
『ラ・ブランシュ』で初めてゲストと向き合う料理人の楽しさを発見し、その後も自分の店のあり方に思いを馳せてきた。パリなどでも研鑽を積んだ末、辿り着いた結論は「お客様と一体になれる10坪以下の物件」。カウンターのみでゆったり10席という新店が誕生した。
「ビストロというと、日本ではどうしても席の狭い印象がありますけど、そうはしたくなかった」。白を基調とした店内も、従前のビストロとは趣を異にする爽やかさ。
「ビストロというジャンルでなく、この店だから行きたいと思えるオンリーワンの店を目指している」。
技術はもちろんフレンチ。しかし、そこに蘊蓄はなく、シンプルにただ旨いものは旨いということを伝えたいと願っているのだ。
「ひとりひとりに一生懸命やって満足して頂く。大変だけど、やり甲斐がある」。店名同様の自然体を貫くシェフの姿も気持ちがいい。
※こちらの店舗は現在、閉店しております。
エクイリブリオ
EQUILIBRIO
天性の“バランス感”で皿を彩る表現者。
“華麗なる経歴”などと表現するのはやや気が引けるが、多少なりとも東京のレストラン事情に関心のある者なら、その軌跡に必ず何かしらの反応を示すに違いない。
自然を生かした都市計画が進む世田谷区・二子玉川。今年8月にオープンした『エクイリブリオ』が、グルマンの間で早くも話題を呼んでいる。理由は一も二もなく、シェフの小笠原圭介氏にあろう。
イタリアンの名手・原田慎次氏率いる『アロマフレスカ』で5年間研鑚を積み、北海道へ。友人のレストランを手伝い悠々自適に暮らしていたが、岸田周三氏の存在を知り、気がついた時には『カンテサンス』の厨房に立っていた。
「岸田シェフも最初、なんでって(笑)。でも、料理のジャンルより、シェフありき。ふたりに共通するのは、真っ当な理論と現場主義」
現代的フレンチを学び、3年経った今年、ついに自身の店を構える運びとなった。
店名の『エクイリブリオ』は、イタリア語で“均衡”の意。イタリアンとフレンチのバランスを追求した皿には、小笠原シェフの料理人としての“歩み”と、これからの方向性が集約されている。
コントワール ミサゴ
Comptoir Missago
“原点回帰”に込められた料理人の想い。
幼い頃から、カウンターで鮨を握る父親の背中を見て育った。一枚の“板”を挟んで繰り広げられる店主と客のやりとりは、子供の眼にも魅力的に映っただろう。
今年8月、日赤通りに看板を掲げた『コントワール ミサゴ』。カウンター主体の店内で腕を揮うのは土切祥正氏だ。広尾の名店『ブラッスリー マノワ』の立ち上げ当初からシェフを任され、ジビエのノウハウを独学で学んだ。
「実家の鮨屋を継がなかったのは、単純にフレンチっていいなと思ったから。帆立ひとつとっても色んな調理方法がある。でも、素材を重視するという考え方は、親父と同じなのかもしれません(笑)」
“素材ありき”の言葉に違わず、土切シェフのフレンチはシンプルが身上。だからこそ、自らの足で美味を“探求”することを厭わない。「マノワ時代の経験を生かしてジビエももちろんやりますが、最近、すっぽんやウナギも面白いなと。こうでなければいけないと決めつけるのはもったいない」
ただ、ひとつだけ譲れないのは“絶対カウンター主義”であること。なぜなら、それは、土切シェフにとっての原点なのだから。