三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.8

「いつクビになるか…」外コン勤務の33歳男。年収3,000万でも精神的に追いつめられ、夫婦仲にも亀裂

― やっと帰って来た…。

「どこに行ってたのよ」「連絡もくれないなんて」「心配したんだからね」

色々な言葉が過ぎるが、思いが溢れて言葉がうまく出てこない。

すると、ミナトが顔を背けて言った。


「あの、荷物取りに来ただけだから」

「え、ちょっと待ってよ。帰って来たんじゃないの?」

クローゼットへと向かうミナトをカリンが追う。

「ちょっと今週忙しいから、会社の近くに泊まってるんだ」

「なら、ちゃんと言ってよ。連絡も全然返してくれないから、すごく心配したのよ」

怒るように声を荒らげるカリンに対し、ミナトは鬱陶しいと言わんばかりの表情を見せた。

「悪かったって。ただちょっと、しばらく帰らないから」

「しばらくってどのくらい?」

「さあ、わからない…」

なんとも歯切れの悪い答えに、とうとうカリンがキレた。

「わからないって何よ?こっちがどれだけ心配したと思ってるの!?いつも勝手に出て行って、話し合いたくってもいないし…」

分が悪くなったのか、ミナトは無言で荷物をまとめ、出て行こうとする。

どれだけミナトの背中に語りかけても、カリンの言葉など何ひとつ届かない。

そんな状況に、とうとうカリンは子どものようにしゃがみ込み、「うわーん」と泣き崩れた。

「ミナト、行かないで。行かないでよ…」

「…え…?」

驚いた顔をして振り向いたミナトは、初めてカリンの顔をまともに見る。

いつも綺麗に化粧をしているカリンの目の下にクマがあるのに気づき、ミナトは、ハッとしたような顔になった。

「…ごめん、カリン。ごめん…。しばらく会っていない間にやせた?心配かけたな…」

「ミナト。行かないでよ。なんで?嫌いになった?好きな人ができたの?」

その時、カリンの泣き声に「おかあさん?」と3歳の娘が起きてきた。そしてミナトを見た瞬間、「おとうさんだー!」と嬉しそうに駆け寄る。

娘のはしゃぎぶりを見たミナトも、思わず目が赤くなった。

「ただいま。ごめんね、ずっと帰れなくて…」

力一杯娘を抱きしめるミナトに、娘は「いーよ」と明るく答える。

「おとうさん、お仕事がんばってるんでしょ?だからね、さみしくてもだいじょうぶ」

「ああ、ごめん、ごめんな…」

気がつけば、ミナトの目からも涙が溢れていた。

ミナトの帰宅に喜ぶ娘を、カリンはなんとか寝かしつける。


リビングに戻ると、部屋着に着替えたミナトが座っていた。

「…出ていくの、やめたの?」

「うん…。悪かった」

「少し、話し合おうか?」

「うん…」

時刻は夜の12時を回っている。

いつもならミナトは「朝が早いから」と、こんな時間から話し合いをすることはまずない。

けれど、さすがに状況を読み取ったのか、素直に応じた。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
ミナトは鬱っぽいのかも。
カリンはなんだか女児?って感じだし「私が仕事辞めたらレスじゃなくなる?」とか思考回路が変。
2024/05/24 05:2535返信3件
No Name
別れたらいいと思う。この二人はずっとお互いに感謝せず自分の事しか考えないで暮らしてきたから。帰宅したらお疲れ様位言えよ、部屋汚ねーしとか、誕生日シカトすんなよとか、お互いに「あのバカ」と思ってる。もう解散でいいよ。Finで。
2024/05/24 05:1934
No Name
ミナト、激務の仕事で八方塞がりで、妻に弱いところを見せずによく頑張ってると思う。相当辛かったと思う。
別れたほうがいい。子宮筋腫も知らないようなカリンはお金持ちの歳の離れたじいさんにみそめられて結婚して何も考えずに暮らすのがお似合いだ。
2024/05/24 06:1617
もっと見る ( 11 件 )

【三人の男たち~夫婦の問題~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo