前回:「俺の大切な人」イケメン年下男からのまさかの言葉に、27歳女は動揺し…
◆
「暗いから気をつけて」
地下への階段を下りる度に音楽が近づき、下りきった先の扉を開けると爆音の世界だった。
― ここはクラブってやつでは?
足元から体内、そして耳へと音の振動が抜けていく初めての感覚。消えたりついたり、色や角度を変えたり。めまぐるしく動くライトが、踊り酒を飲む人たちを浮かび上がらせると、地味なスーツ姿…という自分の格好が大丈夫なのかを大輝くんに確認した。
「大丈夫、誰も宝ちゃんのこと気にしてないし、見てないから」
爆音に負けぬよう大きな声でそう言った大輝くんに、若干失礼にも聞こえますけど?と思いながらも、大輝くんに手を引かれるまま進んだ。
映画でよく見るSPのような男性が2人、自動ドアの前に立っている。そこを顔パス?ってやつで通り過ぎた先にもう一つ扉があった。大輝くんが躊躇なくその扉を開けると同時に、お疲れーという複数の声が響いた。
「左からカツヤ、ショウ、エリック。で、メイくん。メイくんのことはたぶん知ってるよね」
そこにいたのは4人の男性。全員、大輝くんの幼馴染で、親同士も友達…らしいのだが、知っているよねと言われた男性…は知っているどころではなく、自分の顔が一気に赤くなるのが分かる。
― うそでしょ!?何でここに!?
プロ2年目ながら将来日本のプロ野球界を背負って立つと期待されている桐島芽衣選手。愛するソフトバンクの選手ではないけれど、ソフトバンクの選手以外で、私が唯一推している選手なのだ。
推しが突然目の前に現れる確率は人生で何%あるのだろうか。大パニックなのになんとか平静を装おうとする私を大輝くんが、宝ちゃんです、とみんなに紹介してくれたけど、もはや桐島選手しか目に入らない…いや、直視はできないのだけど、アンテナは桐島選手に一点集中している。
「初めまして、桐島です」
......
またはアプリでコイン購入をすると読めます
この記事へのコメント
桐島芽衣って、誰がモデルだろう。有名な選手の息子が1年目で首位打者になるって、かなりレアケースだと思うんですが。2世選手でも親があまり有名じゃなかったり、親が有名過ぎて息子は凡人だったりするのが大半。