三人の男たち~夫婦の問題~ Vol.2

広尾に住む、共働きエリート夫婦。新婚当初から寝室を別にしたけれど、ある問題が…

子どもを持つかどうかの選択


「お入りください」

午後7時。

琴子は、前から予約していた銀座にあるレディースクリニックを訪れていた。


「あら、琴子ちゃん、お久しぶり。今日はどうしたの?」
「杏ちゃん、お久しぶりです。ちょっと最近生理不順で、出血量も多くって…」

クリニックの経営者で院長の杏は、幸弘の同級生・陸の妻だ。

幸弘に紹介され、クリニックを訪れて以来、プライベートでも仲良くしている。

「あのさ、これは全員に聞かないといけないんだけど。現在妊娠の可能性は?」
「え?あ、ないです。ないない」
「そっか。じゃあ触診の後、超音波で確認してみるね」

杏は慣れた手つきで装置を用意すると、琴子を診療台に寝かせ、下腹部にプローブを当てる。

「うーん、小さい子宮筋腫が見えるね。大きさはまだ小さいので大丈夫だと思うけど、経過観察が必要ね」

「筋腫…?」

「そう、この黒いコブみたいなやつ。ただ厄介なのが、場所的に、将来妊娠の邪魔をする可能性もあるわ。子どもを産みたいなら、早い方がいいね。それか、筋腫が大きくなる前に、ちゃんと処置してね」

杏の言葉に、琴子は戸惑った。

帰り道、琴子がぼんやり考えながら歩いていると、スマホが震えた。

義母:『この間、お友達のところに孫が産まれたの、可愛いでしょう???秘訣を教えてもらったらね、やっぱりお魚がいいって。あとね、腰に枕を置くといいらしいわ♡』

思わず、琴子は顔をしかめて画面から目を背ける。

正直、子どものことは、今は考えられない。仕事が楽しいし、ちょうど昇進したばかり。

それに、幸弘とはもう2年ほどしていない。お互いに忙しく、なかなか時間が取れない、というのを言い訳にしているが、琴子自身性欲が少ないのもある。

それでも、夫婦仲は悪くないし、今の状況に大きな不満はなかったのだが…。

「私、子ども産めないのかな…?」

いざそう考えると、琴子は急に怖くなる。



午後8時30分。帰宅した琴子は、1人で食事をして入浴を済ませた。

いつもは幸弘が帰ってくる前には寝ているが、この日はどうしても寝られなかった。

― ガチャリ…。

深夜1時、ドアが開いた音がする。

「琴子、どうした?まだ起きてたの?」

幸弘に優しく声をかけられ、琴子は迷いながらも、聞いた。

「あのさ。今日杏ちゃんの婦人科で診てもらったんだけど…、その…。子どもを産むなら早い方がいいって。ちょっと、子宮の状態が良くないかもって」

「……」

恐る恐る幸弘の顔色を確認する琴子。

だが、キッチンの電気をつけずに水を飲む彼の横顔からは、表情が読み取れない。


しばらく無言の後、幸弘が口を開いた。

「俺さ。子どもって、欲しいと思ったことないんだ」
「えっ?」
「それより、体調は大丈夫?仕事辞めたかったら辞めてもいいよ?別に働かなくたっていいし。じゃあ俺、風呂入ってくるわ」

幸弘は琴子の頭にポンと軽く手を置くと、風呂場へと行ってしまった。


▶前回:「実は、奥さんとずっとレス…」33歳男の衝撃告白。エリート夫婦の実態とは

▶︎NEXT:4月19日 金曜更新予定
義両親からの“子ども産め”プレッシャーに揺れる琴子。一方ミナト夫婦にも問題が…。

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この記事へのコメント

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No Name
複雑な気持ちもあるだろうけど、もう少し親に感謝した方がいいと思った。「子供欲しいと思った事ない」って....一方的に言うだけでなく妻の意見を聞いたり話し合ったりしないのかな?幸弘の意見を通して子供は作らないという結論に達したなら両親にもそれ言わないとだし。なんだかイライラするなこの夫。
2024/04/12 05:2056
No Name
幸弘がいけ好かない男過ぎて、ストーリー内容がちんけに思えてしまう。
2024/04/12 05:1348返信4件
No Name
やっぱりお魚がいいって。あとね腰に枕を置くといいらしいわ♡
生々しいアドバイス! サチ子を思い出すわ。
2024/04/12 05:1541返信1件
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