2024.03.09
アオハルなんて甘すぎる Vol.7確かに私は男性慣れしているとは言いがたい。付き合ったのは祥吾で3人目。1人目は、高校で同じ図書員だったことがきっかけで告白してくれた佐藤くん。
学校の帰り道を一緒に…というくらいだったから男女と言うには幼い関係で、佐藤くんが地元の大学に進学し、私が東京の大学へという遠距離が原因で円満に別れた。
2人目は、大学時代、友香の恋人の友人だった大木くん。お互い熱狂的なソフトバンクファンということで意気投合し、告白されて付き合うようになった。それなりに楽しく2年が過ぎた頃、彼が海外留学するタイミングでこちらも円満にお別れしている。
そして3人目。円満なお別れとは程遠い、祥吾の登場だ。
大学の先輩である祥吾は、私より一学年上。リーダー的ポジションで陽キャのお手本のような祥吾と私では属性が違い、ゼミが同じということくらいしか共通点がなく、すれ違えば挨拶するという程度だった。
関係が変わった…というより始まりは、私の就職活動の失敗がきっかけだった。第一希望にはじまり、その後何社も落ち続けた私を心配したゼミの先生が紹介してくれたのが祥吾で、それ以来、なにかと面倒を見てくれるようになった。
押しが弱く、決断までに時間がかかる私をフォローしてくれたことには今でも感謝している。この会社の事務職に追加募集が出たことを教えてくれて、合格できたのも祥吾のおかげだと思っている。
「宝の人生にはオレが必要だと思う。付き合おう」
私が入社して半年がたった頃、まるでプロポ―スのような告白をされた時はうれしかったし、断ることなど思い浮かびもせず頷いていた。祥吾といればホッとできたし安心した。熱く燃えあがって…とは言えなかったかもしれないけど、私なりに恋をしていた。その恋が突然終わったのが2か月前。
私と祥吾は5年近く付き合い、結婚の話をするくらいの関係になっても、一度も社内の噂にならなかったのに、新しい彼女(祥吾と同じMRで祥吾より1つ年上)とは、はやくも社内の公認カップル的な感じになっている。だからもうほっておいてほしいのに。
「5年も付き合えば、別れたからってすぐに他人になれない。宝はボーっとしてるし欲がないから心配なんだ。これからも相談にのるし助けたい」
そんなLINEが何通かきたかと思えば(その後ブロックした)いまだに社内で会う度に声をかけてくるのだ。
― つまらない女。そう思ったのならもう関わるのをやめて欲しい。
別れを告げられた頃、惨めで逃げ出したくて転職が頭をよぎった。でもそのために苦手な面接にもう一度トライすることや、自分のセールスポイントを探し出すことにも自信が持てず。せめてもと西麻布に引っ越したのが1か月くらい前なのに、もう随分前のことに感じるのは私だけなのだろうか。
― よし、5分前。
予定通りに仕事を終え、念のためクレアに他の仕事はないか確認してから、早歩きで9Fのフロアからエレベーターへ。1Fまで降りると猛スピードでセキュリティゲートを通り抜ける。祥吾に捕まらずにビルの外に出ることができて、ひとまずほっとした。
― まだ来てないかな。
19時には会社の前まで行くよと言ってくれていた大輝くんを探す。今日一日中吹いていたらしい強風のせいで、通勤時にはあった葉がほとんど落ちてしまったイチョウ並木の向こう、大通りを挟んだその先から、宝ちゃーん!と声がして視線を向けた。
子どもみたいに大きな声で叫ばれて恥ずかしくなり、笑ってしまう。
大きな体で長い手を振る大輝くんは、暗くなった街中でそこだけポッと光っているようにとても目立って、道行く人が振り返り、立ち止まり、大輝くんに視線を向けている。
それらは単に大きな声を上げた人への視線というよりは、異様に感じる程のスタイルの良さ、その顔の整いっぷりに気がついたこともあるのだと思う。
私の携帯が鳴り見てみると、≪そっちに渡るね≫というLINEだった。大輝くんに視線を戻すと、私から見れば右、少し離れたところにあった横断歩道の方向を指さしている。私はそちらの方に歩き、大輝くんも移動する。
横断歩道を挟み、大輝くんがこちらに渡るための信号が変わるのを待っていると、宝!と声がした。声の方を向かずとも、誰が来たのかわかって心底がっかりする。
「フロアに行ったら今日はもう帰ったって言われたから。良かった会えて」
走ってきた祥吾はそう言った。私は助けを求めるように、横断歩道の信号を見た。まだ赤。大輝くんはうつむき携帯を見ていて、私に話しかける祥吾に気がついていない。
― とりあえず、大輝くんと合流するまで無視。無視しかない。
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