すべてを求める欲張りな男と女へ。 『美しくなるレストラン』 Vol.10

キネン テウチサリョウ

祈年 手打茶寮

十割で打つのは穀物そのものの味を伝えたいから。粗挽き、更科十割、発芽蕎麦。
くっきりとした個性のある蕎麦が、大地が生んだ滋味を運ぶ。

吟白と豊穣を味わえる吟穣二色¥1,250。吟白は味わいも瑞々しい(天候によって提供できない日もあり)

喉ごしではなく噛んで味わう「穀物」の生命力が宿る麗しき蕎麦

蕎麦は喉ごしというが、この店の蕎麦を食べると新たな感慨を抱く。もっちりとした食感があり、噛むほどに甘い蕎麦。そんな蕎麦の味を教えてくれるのが『祈年 手打茶寮』だ。

供する蕎麦は全てつなぎを使わない十割の手打ち。定番のもりは石臼で粒が見えるほど粗く挽いた蕎麦粉を使う。「吟白」はなんと更科の十割。粘りのない一番粉をつなぎなしで打つのは至難だが、店主の鈴木年樹氏はそれに挑んだ。湯も使わず水のみで。打ち上げた蕎麦は指でつまむとほろりと崩れ、どれほどまとまりにくいかが分かるが、茹でると一変、程よいコシのあるきりりとした蕎麦に仕上がる。

「吟白は今でも5回に1度は失敗する。でも僕なりのやり方で蕎麦という穀物の滋味を伝えたい」

鈴木氏が長野県の修業先『おお西』から受け継いだのが発芽蕎麦の「豊穣」。一晩かけ発芽させた実を挽いて打つのだが、発芽時に生まれる酵素が弾力を生み、噛めばなお深まる甘みに長い余韻がある。

天然いちょうの一枚板をカウンターに据えた店内は凛とした雰囲気。目線の先には、方々の窯を巡り集めたという作家の器が並ぶ。ここで姿勢を正し、自然の声に耳を傾けるかのようにじっくりと蕎麦を味わう。これ、美のなんたるかを知る、あるいは知ろうとする大人に許された楽しみではないか。

右.駒板を使わずに蕎麦を切る鈴木氏。日々、自身の進歩を確かめながら蕎麦に向き合うという 左.天井が高く、席間もゆったり。木や石、竹など自然の素材で設えられた店内は心安らぐ雰囲気に満ちる

右.酒肴も定番から創作まで20種前後と豊富。うど皮のきんぴら¥450。しゃきしゃきの食感が良い 左.蓮根もち¥800。さっぱりと酢醤油で。野菜の一部は千葉で家族が育てたもの


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