2024.03.18
オトナの5分読書 Vol.19
外国に一定期間行く覚悟と資金的時間的余裕がある人に、「強いてどこへ行くべきか聞かれた場合」を想定して、私なりに行く先の優先順位を考えてみた。
私は、アメリカ、シンガポール、インドの順ですすめる。
お金と時間を最も有効に使うならどこか、という観点からのあくまで1つの考え方として捉えてほしい。
①アメリカでスーパーエリート校を目指せ
アメリカをすすめる1つの切り口は、アジアだ。オーストラリアからもカナダからも欧州からも、「アジア」を切り口に人が集まっている。
故に、わざわざアジアにある日本に生きる私たちが、アジアを無視して行先を考える必要はないと思う。
日本の未来はこのまま行けば、かなり暗いが、とてもラッキーなことが1つある。それはロケーションだ。
世界人口の60%を占め、世界のGDPの約30%を叩き出す今世紀最大の成長センター、アジア。日本が、このアジアに位置していることこそが、最大の幸運だ。
アメリカも欧州も、成熟期に入った自国経済をもう一度引き上げるためにアジアを狙っている。
しかし彼らには、アジアは、①距離が遠い、②時差がある、③馴染みにくいためハードルが高い。
一方、アジアから見てウエートが増しているのが、やはり腐っても鯛、アメリカ。アジアの成長を牽引しているのは、人口増加を続ける世界最大の消費地であるアメリカだ。
アメリカがアジアにとって最大の商売相手となると、決済もドルで行われる比率が高い。
カンボジアでは、現地通貨より圧倒的にドル決済だ。そして、アジアを統一する言語も英語になりつつある。イギリスの植民地であった、マレーシア、シンガポール、インドもそうだが、アジアのエリートは中国からASEANまで英語を巧みに操る。
アジアの時代は、日本にとって大きなチャンスではあるが、アジアから見て重要性が増しているのがむしろアメリカ。
アジアに隣接していることは、日本にとって有利だが、アジアから見て重要性が増しているアメリカに行け、というのが私のロジックだ。
したがって、どこへ行くべきかと問われたら、まずはアメリカをすすめる。
アジアのエリートは、アメリカに学びに行く。世界最高の教育機関があり、最も多様で有意義なネットワーキングの場は、アメリカだからだ。
アジアでのネットワーキングを狙うなら、まずアメリカを狙えと言いたい。
しかし、日本からアメリカに留学する人数は減少傾向にある。その理由は以下の4つだろう。
・日本人のアジア志向の高まり
・アジアで多様な留学プログラムが勃興
・経済低迷からコスト重視でアメリカ敬遠
・アメリカの大学のアジア新興国重視
アジア時代の先取りをして、日本人のアジア留学が増えている。特に日本企業の中国進出に合わせて、中国語の習得やネットワーキング目的での中国留学が増えているようだ。
アジアでもシンガポールやインドなどで英語による多様なプログラムが提供され、それらの中心は欧米に比べてあまり遜色がないうえに、はるかに安価で日本から近いという理由が大きい。
アメリカの名門大学や大学院に日本人の留学生が減ったというニュースはよく聞く。この背景には、学費の高騰だけではなく、中国、インド、韓国からの優秀な学生が急増しており、大学の競争が激化していることがある。
特にTOEFLの平均点では、この3ヶ国に大きく引き離され、日本人の英語力では太刀打ちできなくなっている。また大学側も、停滞する日本への関心が薄れ、意図的に元気のいい新興国に重点を移していることも大きい。
もし英語力に自信があるなら、アメリカのトップ校に学部から留学することをすすめる。
世界の次世代リーダーは、イェールやハーバード、スタンフォードなどにアメリカの名門校にこぞって留学している。
これらの大学は、世界各国の大統領や官僚をやっていた人物が教鞭をとっているし、ノーベル賞受賞者もゴロゴロいる。残念ながらこんな教育は、今やアメリカ以外では受けられない。
ネットワーキングにも有利だ。全寮制なので24時間同じ釜の飯を食べながら友情を深めていく。ここで出会い、共に暮らしたつながりは一生モノとなろう。
アメリカの名門校に留学した実績は、その後に万能のパスポートとなる。
今や灘や渋谷教育学園渋谷中学高等学校、麻布、開成のような、インターではない日本の進学校もアメリカの名門大学を目指す生徒が増えている。
②シンガポールでアジアを押さえる
アジアの時代だからこそ、日本人としてはアメリカに行くことが重要だと説いてきた。できるならアメリカの名門に行くべきだ。
しかし、アメリカは、教育費や生活費が非常に高い。昨今の円安に加えて、生活費や学費はドル建てて常に上がっている。
アメリカの名門に確実に行くチャンスがあるなら別だが、そうでなければシンガポールに行く方がベターではないかと思う。理由は下記だ。
・アジアのハブである
・十分英語が学べる
・世界の名門大の分枝がある
・アジアの熱気を最も感じられる
・コストがアメリカより安い
・アジア中心のネットワーキングがいい
シンガポールは、インドから中国、東南アジア、少し足を延ばせばロシアまで押さえられる。
新興国に直接進出するのもいいが、新興国に囲まれ、新興国を知り尽くし、新興国と先進国の橋渡しを生業にしようとしているシンガポールを活用するのがベターだと思う。
住む、働くという視点で見ると、東南アジアで最もビジネスや資産家に有利な税制となっている。
税制だけではない。シンガポール政府では、経済開発庁や国際企業庁といった機関が、外国企業のシンガポール進出やシンガポールを拠点にした世界展開を効果的に支援してくれている。
ビジネスにとってもアジアの中心であるロケーションは最高だが、学生にとってもいい。世界から名門大学を集め、様々なプログラムを提供しているので、世界に冠たるブランド大学の学位や資格が手に入る。
シンガポールの大学や大学院では、世界的な研究者には、国家が提供する潤沢な研究資金が用意されているので、世界から集まった人材と共に切磋琢磨できる環境にある。これは何物にも代え難い。
③思い切ってインドのカオスに賭けてみる
もう1つおすすめするのは、インドだ。
21世紀は、インドの時代と言ってもいいだろう。現在インドの人口は、約14億人。現在のインドの平均年齢は、約28歳。ちなみに日本は48歳だ。
インドの特徴は、内需の大きさ。中国が貿易立国であるのに対して、インドは内需大国なのだ。世界経済の変動をもろに受ける中国と違い、先進国のように内需で確実に成長できるのも特徴だ。
インドは、英語国家でもあるので、グローバル社会での影響力は今後、急速に上がっていくだろう。
また、民主国家である点や、仏教の発祥地、数学に強いなど、日本人がなじみやすい部分は多い。
もちろん、インドはインフラの整備が遅れているなど課題がたくさんある。しかしインドは、人口やその若さ、発展段階、日本への好感度など、多くの課題を補って余りあるくらい魅力がある。
あの圧倒的な国全体のエネルギーに身を置けば、日本では感じられなかった何かを感じられるはずだ。
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