アオハルなんて甘すぎる Vol.4

夫が会社の部下と恋に落ちた。とんでもない男の態度にショックを受けた妻は…


前回までのあらすじ:港区で知り合った愛や雄大たちとともに、パリ旅行に来た宝。そこで大輝が不倫している話を聞いてしまい…。



6時50分。携帯のアラームが鳴る10分前に目が覚めた。起き上がってカーテンを開けると、日の出が遅いパリの街はまだ真っ暗で、まるで夜。

昨夜、水をあきらめてベッドに戻ったけれど、しばらく眠れず。最後に携帯を見た時には2時過ぎだったから、5時間くらい眠った、ということになる。

「明日の朝食はね、宝ちゃんを連れて行きたいカフェがあるの」

そう言ってくれていた愛さんとの約束は8時にリビングに集合。まだ1時間程余裕がある。ただ。

― 昨日、あれから大丈夫だったのかな。

大輝さんに対する愛さんの怒りと、それを諫める雄大さんの声を思い出し、今日の朝食の約束は果して実行されるのか、とやや疑問ではあったけれど、とりあえず服を着替えて、愛さんに「女子用ね」と言われていたバスルームへ向かった。

誰かがヒーターを入れてくれていたようで、バスルーム全体がじんわりと暖かい。洗面所の鏡の前に宝ちゃん用、とかかれた水のペットボトルが置かれていた。おそらく愛さんからかな、と気遣いに感謝しつつ、昨夜以来乾いていた喉を潤し、顔を洗ってメイクをした。

メイクと言っても、ベースを塗り、眉毛を整えてリップでほぼ終わりという、10分もかからない単純な作業を終えて、昨夜の“不倫”についてのもめ事が今もまだ続いていたらどうしよう、などとドキドキしながら、私はリビングへ向かった。

そもそも、大人同士が面と向かって言い争う、という現場を見たのは、初めてかもしれない。私は口論が苦手だから、そんな環境を無意識にさけてきたのかもしれないけれど。

「…おはよう」

リビングにはコートを着た雄大さんだけがいた。マフラーを巻きかけていて、どこかに出かけようとしているようだった。

「愛と大輝はまだ寝てる。オレは今からカフェに行くけど、一緒にいく?」
「…え?」
「宝ちゃん、昨日の夜、俺たちの話、聞いてたでしょ?」

気づかれていた。雄大さんの位置からは、リビングの入り口のドアのすりガラス越しに、立ち去る私の影が見えたらしい。すみません、聞くつもりはなかったんですけど、と、もう一度謝ると、こちらこそ騒がしくて申し訳なかった、と謝り返される。

「宝ちゃんにちゃんと説明しておいた方がいいかな、と思って」と雄大さんは言った。

「今のままじゃ、あの2人に会うの気まずいだろうし、心構えがいるかなと。日本に帰っても一緒にいることが増えるわけだし。それに愛からの伝言で、今日の朝食は無理そうだから宝ちゃんにゴメン、って。だからオレが代わりに。朝食がてら、説明するよ」

どこか私に対して距離があったように見えていた雄大さんが、私をケアしてくれるなんて意外だったけど、行きます、と答えて、コートを羽織り外へ出た。

この記事へのコメント

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No Name
いやいやー、不倫相手の女に子供を取られて(大袈裟な言い方ではあるけれど)、我が子が今その人をママと呼んでるとか考えたらもうメンタル病みそう。愛さん大変だったんだね。
2024/02/17 05:4548返信10件
No Name
本当に面白い、この話!! 宝ちゃんの、平凡で控えめ...揉め事が苦手な女の子感もいいし、それ以外皆キャラ濃いし。 来週シャンパーニュ、楽しみだ。
2024/02/17 05:4333返信2件
No Name
相手の弁護士のくだり、「離婚できない男」の財田先生が浮かんだわ。父親が親権を取れる確率は1割なんでしょう? 色々とでっち上げてひどい話....
大輝とガチバトル、すごい事になってそうで🤣
2024/02/17 05:4929返信4件
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