すべてを求める欲張りな男と女へ。 『美しくなるレストラン』 Vol.5

レストラン リューズ

Restaurant Ryuzu

フランス料理界に大型新人現る。多くのプロから信頼を勝ち得てきたあのシェフが、
ついに独立。確かな技術で美しくなる料理を紡ぐ。

飯塚シェフの華麗なる仕事ぶりを楽しみたい方は是非、カウンターへ。完成した料理が美しいのは、その経過が美しいからに他ならないと気付かされる

旬を軽やかに表現したフレンチを貴婦人が好んだシャンパーニュと

飯塚隆太。近年、この人ほど独立を待たれた料理人もいないだろう。’94 年に恵比寿にあった『タイユバン・ロブション』の部門シェフとなり、その後渡仏。腕に一層の磨きをかけて帰国し、’05年より5年間、六本木『ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション』でシェフを務め、ミシュラン二ツ星へと導いた。その実力は食通のみならず、同業者である料理人たちにこそよく知られていた。当時、有名シェフたちが飯塚氏前のカウンターをよく陣取っていたものである。

フランス料理は伝統的に素材に頼るのではなく、立体的に食味が立ち上がるような骨格を持つ。そのために錬金術さながら、素材から旨みエッセンスを抽出する作業を行う。そうして出来上がったブイヨンやフォンと呼ばれる出汁は美味しさを飛躍的に増幅させる。飯塚シェフはその秘訣をよく知り、また、現実に皿の上で表現してみせることに長けている。

例えば、「岩手産短角牛とコンソメジュレのアンサンブル ホースラディッシュのクレームとともに」(P54参照)。コンソメは旨みエッセンスの最たるものだが、飯塚シェフの手によるそれの澄み切って、深いこと。熟達した技術があってこそ、「美しくなる食事」が確かに表現される。

「心懸けているのは軽やかで優しい味。バターよりもオリーブ油を使うことが多いですし、肉を焼く時は鉄板で余分な脂を落としています。また、旬の食材を使うことで、季節ごとにカラダが必要としているものを料理に取り入れるようにしています」とシェフ。

ワインリストにはシャンパーニュがスタンダードからプレステージまで約40種揃う。ルイ15世の寵愛を受けたポンパドール夫人は「飲んだ後も女性を美しく見せてくれるのはシャンパーニュだけ」という言葉を残しているという。料理と味わえば、美しくなる効果はより期待できそうだ。

右.白バイ貝 帆立貝 グリンピース 空豆のエチュベ エストラゴンの香り。日本料理の和えもののようなニュアンスも。昼コース¥3,600の温前菜 左上.新潟産黄金豚ロース肉 しっとりと火を入れて 根菜のサラダと共に。鋳物鍋の中でゆっくり火を入れた肉はジューシー。昼コース¥5,800の主菜 左下.手長海老のプランチャ焼きにラルドのベール グリンピースのピュレ添え シトロネルの香り。海老を包むのは豚背脂の塩漬け、ラルド。夜コース¥8,400~の温前菜

右.盛りつけにも繊細に心を配る飯塚シェフ 左.古民家を再生した新潟にあるシェフの実家をイメージしたインテリア。木や石など自然素材を使用

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