オトナの5分読書 Vol.17

痩せたいのに目の前のスイーツに負けちゃうのはなぜ?行動経済学を学べば、ダイエットもスムーズに

2. 正しい行動ができないのはなぜ


正しい行動ができないのは、個人の努力不足だけのせいではありません。

「正しい行動」として真っ先に思いつくのは、健康です。バランスのよい食生活、適度な運動、十分な睡眠、禁煙。これらが望ましいものであることは、多くの人が認めるところです。

では、なぜ多くの人が健康行動をしないのでしょうか。

「知ること」と「行動すること」の間には大きなギャップがあるからです。

頭でわかっていても行動しない人たちを動かすには、どうしたらよいのか?を考えることが課題となります。

頭でわかっていてもうまく行動できない背景には、人間の「直感と理性」という脳のシステムがあります。

行動経済学の世界で「直感」は、日常生活における多くの判断を担当し、存在感があり力強く本能的で動きが速いため「象」に例えられています。具体的にイメージしやすくするために、「直感」を「象」と呼びます。

象は頼もしいですが、自分のことが大好きです。そして、面倒くさがり屋で損をするのが嫌いという性格です。

このため、象は正しい情報を得ても歪んで解釈する習性があります。

このように認知が歪む習性を「認知バイアス」といいます。これからは「認知バイアス」を「象の習性」と呼びます

それに対して、理性は「賢い象使い」のイメージで、自制を担当します。これからは「理性」を「象使い」と呼びます


この「象の習性(認知バイアス)」には、たくさん種類がありますが、いくつか紹介します。

「現状維持バイアス」といって、「現状のままで大丈夫なのであれば、それに越したことがない」と考える習性です。

象は、新しい行動の必要性を理解したとしても、これまでの習慣に愛着を持つと、それを手放すときの苦痛を2倍以上強く感じるため、現状維持を選びたくなります。

また、「現在バイアス」という「今が好きと考える習性」があります。

例えば、タバコを1本吸う快楽を100として、将来肺がんになる場合の苦痛を1億だとします。その場合、本来であれば将来の1億の苦痛を避けるべきなのですが、現在バイアスに影響されると、目の前の誘惑に衝動的に飛びつき、将来の苦痛を先送りにしてしまいます。

このように、象は、勉強、がん検診、ダイエット、積立貯蓄といった「面倒くさいのは今で、効果出現は将来」という行動が苦手です。

この場合、象は「今日やっても明日やっても大きな差はない」と考え、今やらないことを正当化したくなります。


夏休みの宿題を例に考えてみます。

象使いは、夏休み前に「この分量を夏休み期間内に無理なく終えるには、毎日30分ずつ勉強することが必要」と合理的な計画を立てることができます。そして象使いは、誘惑があってもきっぱり断ることができます。

しかし、象は友達に誘われるとすぐに飛びつきます。「せっかくの夏休み一日くらい大丈夫、明日その分頑張れば大丈夫」と虫取りに出かけることを正当化し始めます。

象にとって、明日の自分はもはや他人です。

こうなるともう止まりません。夏休み最後の日に大きな後悔が待ち構えています。

注目すべきは、両者の力関係です。象が圧倒的に力強く、象使いは非力なうえにめったに出てきません。

この象が動き出すと、象使いの力では制御が難しいことが多いのです。

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