男と女の東京ミステリー Vol.31

28歳の彼が得意料理「肉じゃが」を振る舞ってくれたが…。女が抱いた“違和感”の正体

人の心は単純ではない。

たとえ友情や恋愛感情によって結ばれている相手でも、時に意見は食い違い、衝突が起きる。

軋轢や確執のなかで、感情は歪められ、別の形を成していく――。

これは、複雑怪奇な人間心理が生み出した、ミステリアスな物語。

▶前回:「ストーカー?」知人男性に後をつけられ戦慄が走る28歳女。麻布十番のカフェに逃げ…


隠し味【前編】


「うわっ、肉じゃがだ!美味しそう~!」

環奈は、テーブルの上に置かれた料理を見て、思わず声を上げる。

今日は、彼氏・圭祐が住んでいる青山のマンションを訪ねていた。

料理が趣味という圭祐が「好きなものを作るよ」と言ってくれたので、「一番の得意料理を」とリクエストしたのだった。

「見た目もすごくキレイ!」

煮崩れもせず美しい仕上がりで、ニンジンの赤色と、絹さやの緑色が鮮やかに映えている。

器にもこだわりがあるのか、有田焼の楕円鉢が、料理を華やかに見せていた。

他のメニューも並べ終えたところで「どうぞ」と圭祐が促す。

環奈は、さっそくメイン料理の肉じゃがに手をつけた。

「牛ひき肉を使ってるんだね!じゃがいももホックホク。甘辛くてごはんが進むのに、くどくなくてすごく美味しい~!」

顔をほころばせながら食べる環奈を、圭祐は得意げな表情で眺めていた。

「ねえ、圭祐。このレシピ教えてよ。私も作りたい!」

「ええ…」

環奈がお願いすると、圭祐は口をつぐんでしまった。

圭祐は、料理に限らず、普段から無口であまり自分のことを語りたがらない。

付き合って2ヶ月になるが、大手自動車メーカーに勤めていること、料理が趣味であることなど、大まかな情報しか知らなかった。

年齢は28歳と環奈のひとつ上だが、それ以上に大人びた印象を受ける。

目もとに陰影を作る彫りの深い顔立ちが、影のある雰囲気を醸し出し、その印象をいっそう助長しているように感じられた。

「その肉じゃが、隠し味があるんだよ」

「隠し味?」

「そう。もし何を使っているのかがわかったら、レシピを教えてあげてもいいよ」

環奈は改めてじゃがいもを口に含み、ゆっくり咀嚼するが、さっぱり見当がつかない。

圭祐のほうを覗くと、プイッと知らん顔をされた。

環奈は好奇心を掻き立てられ、隠し味の正体を知りたくてたまらなくなるのだった。

この記事へのコメント

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No Name
肉じゃがは普通に牛肉使ったのが好きだな😊
2024/02/15 05:1930
No Name
あーぁ、またお決まりの偶然たまたまが重なった話かな。確かに肉じゃがをひき肉で作る人はそんなに多くないとは思うけど、他の野菜はだいたい似たような物使うし、盛り付け方はたとえレシピが同じでも人それぞれ変わってくる。小三の時に教わったとしても母親と同じ盛り付けになる?😂 色々と無理がある話だし後編も期待薄かな。
2024/02/15 05:1628返信3件
No Name
昨日の舐め腐ったサクセスストーリーよりは幾分マシだけど、一体いつまで続くこの連載?
2024/02/15 05:3621返信1件
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