
旬素材がどっさり、極上パスタ
料理人人生の途上、ふと足が止まった31歳の時、イタリアへ渡る。ローマで食べたカルボナーラに衝撃を受けて、自らの行方が定まった。旨かったから、ではない。
「ボウルに溶いた卵、そこへ、ペコリーノ・ロマーノをがさっとひとつかみ。これで茹でたパスタを和えるだけだったんです。しょっぱくて、食べられなかった!」と笑う、加藤政行シェフ。だが地産地消が当たり前の地で、この味を愛する人々がいるイタリアのシンプルだが奥深い魅力に触れ、迷いは消える。
ローマ『チェレスティーナ』のオーナーから、「カルボナーラの材料である卵は炎、パンチェッタは炭、黒こしょうは灰を意味すると教えられましたが、本当かどうか」とまた笑う。だが、料理には歴史と文化を背景にした物語があることを片時も忘れることはない。
「予約の取れない料理教室」のキーワードで世に出た彼が、常に明快な語り口で作り方を教えられるのは、それを重々承知しているから。新店だが既に安定感あり。その理由は、この辺りにある。