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  • 大人が本当に贅沢な美味を追い求めたら、“常磐もの”に辿り着く!

    故郷を離れていっそう深まった“常磐もの”と福島への想い

    大波兄弟を育て上げた福島という地と、美食の国・日本が誇る“常磐もの”。

    故郷に恩返しをしたいと話す大波兄弟が、その熱き想いを語ってくれた。


    祖父は元小結の若葉山、父は元幕下の若信夫で、実家は人気のちゃんこ店。

    現在、角界のホープとして頭角を現している「若隆元(=大波 渡さん)」「若元春(=大波 港さん)」「若隆景(=大波 渥さん)」の“大波兄弟”が相撲の道へ進んだのは、必然だった。

    小学生の頃、地元の「わんぱく相撲教室」に入門。

    当時の写真によると、長男の渡さんは中肉中背で、次男の港さんは身体が大きくて目立つ存在。三男の渥さんは細くて小さかったが、それぞれがそれぞれに弛まぬ努力を重ね、大相撲の土俵へと上がっていった。

    そんな彼らの体の基礎を作ったのが、生まれ故郷・福島の豊穣な海で獲れる“常磐もの”である。

    左から長男・若隆元、三男・若隆景、次男・若元春

    ただ、実際に兄弟に話を訊いてみると、実家で暮らしていた頃はその存在をほとんど意識していなかったらしい。

    港さん曰く「父は板前なので、僕らが相撲の練習でお腹を空かせていると、店で出す魚の中から少しずつ見繕って海鮮丼などを食べさせてくれました。

    それは確かに大はしゃぎするほど美味しかったのですが、あまりに身近な食材だったので、当時はその素晴らしさに気づくことができませんでした」。

    だが、角界に入り、東京での生活が長くなってくると、“常磐もの”の美味しさに開眼したらしい。渡さんが言う。

    「弟の渥は釣り好きの父に感化されたようで、日頃からよく自分で魚を捌くんです。

    兄弟三人で集まるときには常磐もののヒラメなどを舟盛りのようにして振る舞ってくれるのですが、それを食べると、やっぱり旨いんだなあと感心させられますね。僕らは恵まれていたのかもしれません」


    そんな渡さんは、聞けば大の鮨好き。予約の取れない超名店から新進気鋭の職人が腕をふるう店まで、ひとりでも食事をしに出かけるという。

    昔から店で忙しい両親に代わって弟たちの世話をしていたというから面倒見がいいのだろう、部屋の若い衆を連れていくこともあるそうだが、そこに恐らく豊かな自然に恵まれた食の宝庫・福島で生まれ育ち、味覚が磨かれたという背景が関係している。

    さて、東京に拠点を置く彼らだが、ふるさとの結びつきは今も強い。

    最近でいえば、今年8月には大波兄弟が所属する荒汐部屋が、福島県福島市で夏合宿を行った。5日間の朝稽古には延べ3,200人が来訪するほどの盛り上がりを見せたという。

    「ありがたかったです。番付が上がると、もともと相撲に興味がなかった方まで応援してくれるようになる。地元の方々に支えられているということをしみじみと実感しました」(港さん)

    「合宿の合間に母校の子どもたちと交流したのですが、そこで僕ら三兄弟に憧れて相撲を始めたという言葉をもらいました。

    自分が誰かに夢を与えられているのかもしれない。そう思ったら、体の奥底からふつふつと力が湧いてくるような気がしました」(渡さん)

    ふたりに今後の抱負を訊ねると、「小学生のときに『誰でも知っているようなお相撲さんになりたい』という目標を立てたのですが、今はまだ道半ば。『若元春』と言ったら顔が浮かぶような力士になるよう精進したい」と港さん。

    兄の渡さんは「早く弟たちに追いついて、関取三兄弟という夢を果たしたい」と言葉に力を込めた。

    今年は初場所で若元春関が小結昇進を達成したことにより、弟・若隆景関とともに「若貴」以来31年ぶりの兄弟同時三役を達成したが、もし三兄弟同時関取が叶えば史上初の快挙となる。

    彼らのふるさとである「福島」が今まで以上に脚光を浴びるだろう。

    彼らを養った“常磐もの”にも関心が高まるに違いない。“常磐もの”を楽しめるレストランは東京にもたくさんある。大波三兄弟の活躍と共に注目してみてはいかがだろうか。

    「荒汐部屋」

    稽古場がガラス張りで外から自由に眺められるため、稽古がある日は海外観光客含め200人近くの人が訪れる。

    鍛え上げた体のぶつかり合う音の凄まじいこと!迫力満点だ。

    ■概要
    住所:中央区日本橋浜町2-47-2
    URL:https://arashio.net/

    大波兄弟を育てたちゃんこ鍋で、本場の“常磐もの”を体感する

    ふるさと・福島への熱い思いを語ってくれた大波兄弟だが、彼の実家もまた福島の地でちゃんこ店を営んでいる。

    角界でたくましく輝く大波兄弟を育てた実家のちゃんこ店で、“常磐もの”の凄みに迫った。

    地元を愛する元力士が腕を振るう、豪快かつ繊細な郷土料理/『ちゃんこ 若葉山』

    JR福島駅から車で約5分。通り沿いの大きな看板を目印に入店すると、大波兄弟の等身大パネルや、その勇姿を写した垂れ幕が目に飛び込み、気分が上がる。

    最新の番付表や、有名力士の写真、手形などが飾られた楽しい店内では、福島の港で水揚げされた新鮮な“常磐もの”を堪能できるという。

    この店こそが、元力士で、大波兄弟の父親である大波政志さんが腕を振るう『ちゃんこ 若葉山』だ。

    「ヒラメのお造り」時価(¥1,000前後)。肉厚で身が締まっていて美味

    「メヒカリの唐揚げ」¥600。からりと二度揚げされているので骨まで食べられる

    メニューで注目したいのは、やはり本場の“常磐もの”を使った料理の数々。

    中でもこれからの時季は旬のアンコウが主役のちゃんこ鍋を見逃すわけにはいかない。

    あん肝入りの赤味噌で仕立てられた季節限定の「アンコウちゃんこ鍋」1人前 3,500円(※2人前から注文可)。軍配うちわ型に飾り切りされたニンジンが目を引く

    釣りが趣味の政志さん曰く「砂地が広がっている常磐沖の海底は、砂の中に潜んで生息するアンコウにはもってこいの場所。常磐もののアンコウに含まれる肝は味がとても良く、特に冬季は肝に脂がのるので、濃厚になります」。

    その肝と仙台味噌を合わせたタレがベースのスープは滋味に富み、飲み干したいという衝動に駆られるほど美味しい。アンコウの身や、同じく冬に旬を迎える野菜と一緒に煮込むことでその味わいは深まり、舌、胃袋、そして心を歓喜させる。

    肝に栄養をたくさん蓄えていて「海のフォアグラ」とも言われるアンコウ。潮目の海の豊富なエサで育つ“常磐もの”のそれは、肝が大きく脂がのっていて、市場でも高く評価される絶品。12月から2月頃に旬を迎える

    角界を沸かせている大波兄弟の実家ゆえ、果ては石垣島からも客がやってくるそうだが、この鍋を味わったら、移動の疲れもあっさり吹き飛んでしまうことだろう。

    『ちゃんこ 若葉山』

    住所:福島県福島市方木田字稲荷塚36-2
    TEL:024-546-2337
    営業時間:【火~土】17:00~23:00
         【日】17:00~22:00
    定休日:月曜
    席数:カウンター6席、テ-ブル80席

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