“常磐もの”とは、福島県浜通りと茨城県の沿岸地域で獲れる水産物の総称。
この地域の海は黒潮と親潮がぶつかる「潮目」であり、黒潮とともに北上してきた魚が、親潮で発生したプランクトンを食べて繁殖するため、質のいい魚が獲れると有名。
旨みが強く、魚市場のプロも美味しいと認めるブランド魚だ。
そんな、食通を唸らせる“常磐もの”の魅力を紐解くため、福島で生まれ育った話題の大相撲力士“大波兄弟”と共に江東区森下の裏路地に立つ一軒の古民家を訪ねた。
極上の海の幸を食べて育ったふたりの口からは、“常磐もの”のどんな魅力が語られるのだろうか。
さらに後半では、東京に居ながら“常磐もの”を楽しめるレストランもご紹介する。
記事の最後に、「常磐ものセット(5,000円相当)」のプレゼントも用意しているので、チェックを忘れずに!
お忍び客の利用も多い、隠れ家風のちゃんこ店『料亭 時葉山』の2階に通された力士「若隆元」こと兄の大波 渡さん(右)と、「若元春」こと弟の港さん(左)。
ふたりとも食い倒れツアーに出かけるほどの食好きで、渡さんは「東京カレンダーを愛読している」とか。まずは福島の日本酒で乾杯。
ここからは、大波兄弟が名物のフグちゃんこを楽しんだ『料亭 時葉山』と“常磐もの”の魅力に迫っていこう。
「荒汐部屋」御用達のちゃんこ店で体感する“常磐もの”の魅力/『料亭 時葉山』
大波兄弟が所属する荒汐部屋にとって馴染みの深い『料亭 時葉山』は、力士が創業し、現在は長男の春木敏哉さんが二代目として腕を振るうちゃんこ店。
魚の目利きが太鼓判を押す“常磐もの”も扱っている一軒だ。
食べるべきは、常磐沖で育まれたフグと甘み豊かな冬野菜が共演するちゃんこ。旨みが溶け込んだスープが腹にしみる。
12月30日までの期間限定メニューとして提供され、値段は時価。仕入れ次第のため、まずはお店に問い合わせを。
潮に揉まれた“常磐もの”のトラフグは身が締まっていて美味しい!
『料亭 時葉山』の魅力のひとつは、海に精通した店主の、お眼鏡にかなった魚を味わえること。“常磐もの”も然りだ。
「福島県の沖合には親潮と黒潮がぶつかり合う潮目がある。魚は激しい海流に揉まれることになるので、身が締まって筋肉質になるんです。
うちの店では信頼の置ける豊洲の仲卸から仕入れたフグをコース仕立てで提供していますが、条件が揃えば上等な常磐もののトラフグもお目見えしますよ」と春木さん。
フグは猛毒を持っていて、その程度には個体差があるものだが、それを確かな経験値をもって見極め、鮮やかな包丁さばきで手早く可食部位を取り出していく。
春木さんは釣り専門チャンネルにレギュラー出演したり、休みの日は釣りに明け暮れる無類の釣り好き。
釣果が上がればそれをお造りや揚げ物などに仕立てて振舞ってくれるという。
昆布出汁にくぐらせて、いい塩梅に火が通って白くなったぷりぷりの身をポン酢に付けていただく幸せといったらない。
大波 渡さんと港さんも、贅沢なフグちゃんこを前に笑顔がこぼれる。
ふたりが所属する荒汐部屋と『料亭 時葉山』には、ある特別なご縁があるという。
聞くところによると、荒汐部屋の親方とおかみさんはこの店での出会いがきっかけで結婚したのだとか。
さらに大波兄弟は元小結の若葉山が祖父、元幕下の若信夫が父という力士の家系に生まれたのだが、その若葉山は時葉山にとって、同じ時津風部屋の大先輩にあたる人物。
店の2階にある座敷には、時葉山が現役時代に使用していた化粧まわしや明荷などに混じって、両力士の姿を収めたモノクロの写真が飾られている。
「うちの実家にも同じものがあります」と渡さん。「ご縁のあるお店のちゃんこをいただけるのは感慨深いですね」と港さん。
さらに座敷には、力士の写真が多く飾られている。
この写真は、戦後初の天覧相撲が行われた昭和30年5月場所の1コマ。大波兄弟の祖父・若葉山が太刀持として写っている貴重なショットだ。
この日は、二度挽きの鶏肉で作った団子が入る定番の鍋も堪能。
自家製醤油もしくは味噌ベースのちゃんこがあるが、どちらも見逃せない。コース 1人前 7,500円~
旨みが溶け込んだスープが五臓六腑に染み渡れば、日本に生まれて良かったとしみじみしてしまうだろう。
『料亭 時葉山』
住所:江東区森下4丁目24-10
TEL:03-3634-8705
営業時間:17:00~LO21:30
※完全予約制
定休日:不定休
席数:テーブル80席
URL:https://www.tokibayama.com/