2011.06.21
予約が取れなくなるレストラン 【新時代の若手】編 Vol.7予約が取れなくなるレストラン 【新時代の若手】編
導かれ、応え、発露す。すべての啓発に素直たれ。
中目黒に『鮨 尚充』の暖簾を掲げた、安田尚充氏だ。16歳の若さで知る人ぞ知る名店、自由が丘の『鮨幸』に入るも、10代は迷いがなかったわけじゃない。だが、実家に戻っても台所に立っては鮨を握る自分に、「この道しかないんだ」と答えを出す。
親方と女将は親同然。恩には報いねばならぬ。ここからが正念場。2階建ての店で2階カウンターを任されて6年が過ぎる。この時、赤坂のとある名店に出合わなければ、もう少しだけ独立は遅かったかもしれない。「しゃりそのものの味わい、ネタにほどこす仕事と管理、握り全体のバランス、そのすべてが完璧だった」というそれを口にしてわき出る、「自分が使いたい魚は? しゃりは?」という思いに、どうしてもあらがうことはできなかった。
いつしか「自分の鮨」を供する場を求め、心を決める。ひとつとこで15年修業したからか。もちろん、磨きぬいた腕を見込まれてのことだろう。開店前からひそかに独立がささやかれ、オープン直後から早くも満席続き。ご祝儀相場としても、初速の勢いはただ感心するばかり。それが、2011年。
数少ない休日は鮨を食べ歩き、日がな1日鮨のことを懸命に考える。和が好きだという相澤氏、スローライフに傾倒する安田氏ともに、暮らし方への考え方を店づくりに活かす。そして日々の研究はダイレクトに毎日の鮨に反映される。若きふたりの素直な心根が、鮨屋の垣根を低くする。
活況を呈する東京の鮨屋はまた、新たな局面を迎えたようだ。
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