2023.03.20
SPECIAL TALK Vol.102令和のニューリーダーたちへ
生命の設計図といわれるゲノム。その本体となるDNAには生命活動のもととなる遺伝子の情報が書き込まれている。
そして、DNAの一部に人が手を加えて遺伝子を書き換える技術が、ゲノム編集だ。
近年、新しい技術の登場によって今まで以上に正確なゲノム編集が行えるようになり、さまざまな領域で大きな変化が生まれることが期待されている。神戸大学の西田敬二教授もゲノム編集の研究に携わるひとりだ。
神戸で生まれ育ち、東京大学、ハーバード大学を経て故郷に戻ってきた。
西田教授が生物学研究者を目指した理由、ゲノム編集を専門にしたきっかけを尋ねながら、日本社会や大学が抱える課題についても語り尽くす。
西田敬二氏 1997年、灘高等学校卒業。2001年に東京大学理学部生物科学科卒業後、2006年に東京大学大学院理学系研究科博士後期課程生物科学専攻修了(博士号取得)。その後、立教大学理学部博士研究員、米ハーバード大学医学部博士研究員、神戸大学自然科学系先端融合研究環特命准教授を経て、2016年11月より神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授に着任。現在、同大学先端バイオ工学研究センター副センター長、および先端プラットフォーム技術開発部門・部門長を務める。2017年、バイオベンチャー、株式会社バイオパレットの設立に参加。取締役として経営に参画し、技術顧問を務める。
金丸:本日は神戸大学の西田敬二教授をお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
西田:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:今日の対談の舞台は銀座の『本店山科』です。最高級と評価される「完熟近江牛」をはじめ、和牛を中心に据えたコースを割烹スタイルでお楽しみいただけます。
西田:料理もとても楽しみです。
金丸:最初に、西田さんの研究内容を簡単にご紹介いただけますか?
西田:はい。私はゲノム編集の技術そのものを研究しています。
金丸:たしか、ノーベル賞を受賞した技術ですね。
西田:そうです。2020年にノーベル化学賞を受賞した「クリスパー・キャス9」が代表的な技術です。
金丸:その技術を使うと、どんなことができるようになるのですか?
西田:DNAを記録媒体や文字だとすると、ゲノムは情報そのものというか、プログラムのようなものです。そのプログラムの働きを変える手段として、「クリスパー・キャス9」という酵素の「はさみ」を使って、ゲノムを構成するDNAの一部分を切ったり貼ったりして組み換えるようになりました。ただそれだと、こちらが意図したとおりの働きをしないことがあります。
金丸:プログラムにバグが出てしまう、ということでしょうか?
西田:そうなんです。プログラムを部分的に無効化することはできますが、それは別のものに書き換えているわけではないんです。できることは限られるし、無効化したつもりが実は違うプログラムに変わっていたりして、予想外のことが起きる危険性もあります。そういう副作用が起こらないように、できるだけ正確に書き換える技術として、“切らないゲノム編集技術”が生まれました。
西田:医療や農業などあらゆる分野に応用は可能ですが、私たちが目をつけているのは、マイクロバイオームという分野です。マイクロバイオームとは、善玉菌や悪玉菌、日和見菌などと呼ばれる、人体に共生しているたくさんの細菌やウイルスのことをいいます。彼らは人の健康と密接な関係がありますが、面白いことに単に悪玉菌を取り除くというアプローチだと、一時的に悪玉菌がいなくなってもすぐに戻ってしまうんです。
金丸:ということは、マイクロバイオーム内でバランスがあるんですね。
西田:だったら特定の菌を取り除くのではなく、ゲノム編集によって善玉菌の能力をより高めたり、人に悪さをしない悪玉菌に変えたりなど、適切にコントロールするアプローチはどうか、と。腸内細菌だと糖尿病や癌、アルツハイマーなど脳神経系にも関連し、口の中だと歯周病、アトピー性皮膚炎に関係する肌のマイクロバイオームもターゲットになります。
金丸:ちなみに、今日は和牛をいただきますが、和牛のゲノムを調べたくはなりませんか?
西田:めちゃくちゃ興味ありますよ。おそらく、脂質の合成に関係する遺伝子が特別なんじゃないでしょうか。それに、畜産は地球温暖化の要因にも挙げられますし。
金丸:ウシのゲップに含まれるメタンガスは、二酸化炭素の何十倍もの温室効果があるといわれますからね。
西田:これまでも餌や飼育方法を工夫することでメタンの発生を抑える研究はされていますが、ウシのマイクロバイオームをいじれば、メタンの発生量を減らせるはずです。
金丸:面白いですね。ゲノムという生命の根幹に関わる分野だからこそ、何でもできる可能性がある。ちなみに、西田さんは今、おいくつですか?
西田:43歳です。
金丸:お若い!西田さんは国内ではゲノム編集のトップランナーです。若い研究者が活躍しにくいとされる日本で、どのように歩まれて今に至るのか、じっくりお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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