2012.04.21

～心と身体に効く逸品～催淫メニューのホント!? Vol.1

アピシウス

APICIUS

海亀
「ウミガメの精力の強いことは、あの産卵の努力でもわかることだが、
生命の長さが地球上第一――三百年ということが、なによりの実証だ。」
『舌』（秋山徳蔵・中公文庫）

小笠原産母島の海亀のコンソメスープシェリー酒風味￥3,410。毎年4月末からの1ヶ月間が漁業期間ゆえ、この時期は生の海亀から抽出したスープを楽しめる。『舌』でも語られる、生命力の強さを澄んだスープに凝縮

時折、気になっていたのだ。オーガニックだのなんだのと言われているこのご時世に、ケミカルなものを肌に塗って出かけていいのかと。だって身体はそこかしこが食べ物だから、唇が吸ったそれらは胃の腑に落ちる。それで病気になった色男はいないけど、食の安心・安全を気にするならこれは失態かと。

ならば内から肌を輝かせるより他ないわけで、向かうは有楽町『アピシウス』、注文すべきは「海亀のコンソメスープ」だ。東京都漁業調整規則にのっとり小笠原諸島・母島で捕獲される年間わずか135頭の雄のうち、約1割が同店スペシャリテに生まれ変わる。

アオウミガメの甲羅、手足、頭、骨から取った濃厚なフォンに、透明感ある美しいバラ色の肉を加えて濃厚かつ澄んだスープに仕立てられたそれは、とろりとしたコラーゲン満載。甲羅裏部分のゼラチンも浮き実としてくまなく使う。コラーゲンが破壊されるからと、香味野菜からニンジンを外すこだわりよう。結果、飲めば翌朝、身体中がしっとりと艶やかに輝くことは、多くの妙齢の女達が体感してきたことだ。

創業すぐに生まれ、作り方は今も変わらぬこのスープ。高栄養価ゆえ強壮剤としての側面も。女にとっての効能は翌朝に現れるが、男なら即時とも。タイムラグのその悩ましさもまた、媚薬らしさか。

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