「ラランド」サーヤが書き下ろし!“港区の代理店時代”の葛藤と、いま“渋谷”を愛する理由

結局長く使える「掘り出し物」が見つかる街、渋谷


そんな私にも格好つけたい日はある。

八王子から渋谷に遊びに来た母をおもてなしする時は、決まってスクランブルスクエアを案内する。ガード下の私の姿を見て不安にさせたくないから、「すっかりシティガールです」と言わんばかりに綺麗めなごはん屋さんを紹介していく。

特によく利用しているのが12階レストランフロアにある『TEPPANYAKI 10 SHIBUYA』だ。ガラス張りで渋谷の街を見下ろせる、オープンキッチンの店。

ここの伊勢海老コース、主役の伊勢海老が嘘みたいにデカくて爆笑する。恐竜図鑑に載っててもおかしくない。とにかく肉厚でブリンブリンだ。ラッパーのネックレス以外で"ブリンブリン"を使うことになるとは思わなかった。

母にごはんを奢る時はいつも「高いものじゃなくていい」と頑なに拒まれるが、ここのごはんだけは美味しすぎて「また食べたい」と言ってくれる。それがうれしくて毎回このお店にしてしまう。

おもてなししているようで自分がおもてなしされていることに気づく。


社会に出てしばらくは誰かに認められるために、自分の居心地よりも他人の評価を優先していたと思う。星の数や店名だけが正しいと思っていた。

でもその間に味わった素晴らしいお店の料理たちは、私の中で高速で消化されてしまい、舌にも頭にも残ることはなかった。今、誰の目も気にせず大事な人とつつく大皿の何かが一番美味しい。


誰かをもてなし尽くして疲れた時は、ぜひ自分をもてなしに渋谷を訪れてみてほしい。

福袋の中には意外とガラクタのように見えて、結局長いこと使うことになるような掘り出し物が眠っている可能性がある。


1995年、東京都生まれ。上智大学在学中にお笑いコンビ・ラランドを結成。2021年に個人事務所「レモンジャム」を設立。2022年には川谷絵音らとのバンド『礼賛』でメジャーデビューを果たす。

今月の『東京カレンダー』は「大人は渋谷を賢く使う」特集。渋谷デートも大人が楽しめる実力派レストランならもっと楽しくなる!

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