「えっ。優子も子どもいるの?しかもうちの息子と同い年って…すごい」
結婚式場から近い『ライク』で私たちはこの7年間にあった出来事を、それぞれ報告し合った。
すると、優子は結婚していて昨年の10月に出産しており、今1歳の娘がいることが判明したのだ。
私にも来月1歳になる息子がいる。息子の誕生日は11月だから、月齢も近い。
― こんな身近にママ友がいるなんて…。
指輪をつけていたし、席次表に書いてある名字も変わっていたので、結婚していることは察していた。
でもまさか、同い年の子どもがいることは予想外だった。
「コロナで結婚式が何度も延期になってね。それなら子どもを先に作ろうか…って」
「うそ。うちもなんだけど」
私は、菜々緒に申し訳ないと思いながらも、優子にばかり話をしてしまう。
「ふたりとも育児してんのか~。なんだか、置いてかれちゃったなぁ」
ポツリとつぶやいた菜々緒は、あれから2回転職し、今はWEBデザイン会社で働いているらしい。
かなり仕事ができるらしく、役職がついていて部下もいると聞いて感心した。
「息子ちゃんは旦那さんが見てるの?」
優子に聞かれ、私は我に返った。
「そう。 旦那が見てくれてる。優子のところもパパとお留守番?」
私が尋ねると、優子が少し寂しそうに答えた。
「ううん。今日は横浜から母親が来てくれているんだよね。夫は昨日から出張でいなくてさ」
優子の夫は、大手メーカーの情報システム部にいるらしい。
エンジニアでも出張があるのは、普通なのだろうか。私は夫が会社経営をしているので、その辺が疎い。
そんなことを考えていると、菜々緒が口元を緩ませながら意地悪な質問をする。
「出張じゃなく、こっそり他の女子と旅行してたらどうする~?」
しかし、優子は全否定した。
「女?ないない~。ここだけの話、うちの夫すごいんだよ。妊娠中から今も、しつこいほど求めてくるんだよね…」
「へ~そうなのね。子どもがいてもラブラブでうらやましいっ」
菜々緒はそれ以上、優子の話を聞かず、アハハと笑いながら話を切り上げた。
気づくと外はすっかり暗くなり、ディナーで訪れた客でお店は賑わっている。
「そろそろお会計する?早く帰らないと夫から連絡が来そう」
私がふたりに言うと、優子も同意した。
「そうだね。それに、数時間離れると子どもに会いたくなるよね」
本当は、このまま深夜まで何軒もハシゴして飲みたいのだが、そういうわけにもいかない。
あの頃とはもう、遊び方はすっかり変わってしまった。
その事実に切ない気持ちになりながらも、同じく母親業をしている優子と、これを機に改めて仲良くなりたいと思った。
「ふたりともインスタやってる?LINEも交換してあるよね?」
私が言うと、優子と菜々緒はスマホを手にした。
すでにLINEは登録されていたし、なんならグループも作られていたことに、3人で笑い合って会はお開きになった。
私はふたりと別れ、アプリでタクシーを呼び、自宅のある六本木へ向かう。
すると、早速グループLINEに優子から連絡がきた。
『優子:サトミのチビちゃんに会いたいし、よかったらどちらかの家でランチでもしない?』
― 菜々緒、ごめん。
どうしても子ども優先になってしまうことを心の中で謝りながら、『そうだね!』とメッセージを返す。
タクシーの窓から港区の景色を眺めた。
7年前、「いつかはここに住みたいね」と3人が憧れていた港区。そこに私だけが住んでいる優越感を抱きながら。
◆
【登場人物】7年ぶりに再会を果たした32歳女たち
▶他にも:夫婦の思い出の香りを、別の女がつけていて…。バリキャリ女が離婚を切り出された衝撃の理由
▶Next:11月19日 土曜更新予定
サトミと優子。ママ友同士の友情物語?が幕を開ける
東京カレンダーが運営するレストラン予約サービス「グルカレ」でワンランク上の食体験を。
今、日本橋には話題のレストランの続々出店中。デートにおすすめのレストランはこちら!
日本橋デートにおすすめのレストラン
この記事へのコメント
何となくイライラする展開になりそうだわ。