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「今日来るのは、私がゴルフを通じて最近知り合った山口康介さんと、その友達の古川大輝さん。ふたりとも那月と一緒で慶應卒。で、今34歳」
2週間後、麻由子の運転する車で、セッティングしてくれたゴルフ会に向かっていた。
「山口康介さんは、幼稚舎から慶應。で、商社に行った後、家業を継いでるよ。古川大輝さんはITベンチャーの経営者だって」
「麻由子が好きそうなタイプね」
「スペックがいい人なんて、皆好きでしょ!そもそもゴルフって、結構お金かかるから、趣味にしている人はだいたいハイスペだよ。
下手な出会いの場より、いい人と出会えるし、飲み会より相手のことよく知れるし。それに、たとえ相手がイマイチでも、ゴルフが楽しめるんだから、リスクなし!」
確かに、麻由子の言う通りかもしれない。
ゴルフも楽しめて出会いがあるかもしれないなんて、一石二鳥だ。
緊張していた私だったが、ただゴルフを楽しむために行くのだと頭を切り替えたら、次第に気分が華やいできた。
麻由子が運転するBMWは、クラブミュージックをBGMに、颯爽と東名高速を厚木方面へと走り抜ける。
― こんな立派なゴルフ場来たことない…。
7時半、私たちは『厚木国際カントリー倶楽部』に到着した。都心からのアクセスもよく、いわゆる名門といわれる場所だ。
到着すると、まずクラブハウスの重厚さに驚いた。これまで訪れたことのあるゴルフ場とは比べものにならないほど、ロビーも広くゆったりとしている。
「麻由子ちゃん、おはよう!」
受付を済ませロッカールームに向かおうとしたとき、男性が声を掛けてきた。
「康介さん!今日はよろしくお願いします!こちら私の友達の那月で、今は、美容業界に特化したコンサル会社で働いているよ」
麻由子がすぐに反応する。
「那月ちゃん、はじめまして。麻由子ちゃんの友人の山口康介です。あと今日一緒に回る古川大輝。彼のお父さんがここの会員権持ってて、予約とかは大輝にしてもらったんだよ」
「那月ちゃん、麻由子ちゃん、よろしくね」
ふたりとも“おしゃれゴルファー”といえば真っ先に思い浮かぶブランド『パーリーゲイツ』のウェアを身にまとっている。
高身長で、適度に筋肉質な体格のふたりによく似合っている。
康介さんは比較的細身で色白。ゴルフウェアを着ていなかったら、インドアな印象を受けるような人だ。
一方、大輝さんは健康的に少し日に焼けていて、なんらかのスポーツをしているのだろうなとすぐわかるような人だった。
「おふたりもゴルフお上手だとお聞きしたので、足を引っ張ってしまうかもですが、よろしくお願いします…!」
「大丈夫だよ、一緒に楽しもう!また、あとで」
大輝さんの爽やかな笑顔に、私の緊張感が少しほぐれた。
彼らと別れ、私たちは、更衣室に向かった。
今日のために新調した『ジャックバニー』のポロシャツとハーフパンツを身にまとい、髪を結んで気合を入れる。
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