高度1万メートルの、空の上。
今日もどこかへ向かう乗客のために、おもてなしに命をかける女がいる。
黒髪を完璧にまとめ上げ、どんな無理難題でも無条件に微笑みで返す彼女は「CA」。
制服姿の凛々しさに男性の注目を浴びがちな彼女たちも、時には恋愛に悩むこともあるのだ。
「私たちも幸せな恋愛がしたーい!」
今日も世界のどこかでCAは叫ぶ。
「Beef or Chicken~空の上の恋愛模様~」一挙に全話おさらい!
第1話:機内で名刺をもらった28歳CA。ステイ先で連絡したら…
― なんか、違うんだよなぁ。家を出た時と。なんでだろ?
キッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注ぐ。それを一気に飲み干したら、また同じ「なんか違う」感じがする。
部屋をぐるっと見回し、クローゼットの中の部屋着を取り出そうとした時。七海は“違和感の正体”に、ようやく気づくことができた。
「あれ?ない?」
慌てて洗面所まで戻ると、それは確信に変わった。
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第2話:いい男をゲットするために食事会で「CAあるある」を披露する28歳女。男は見抜けないその手腕とは
沈みぎみの七海を気にかけ、後輩の莉里子が、食事会をセッティングしてくれた。相手は、ハワイで知り合った弁護士の1人とその友人だ。
オフだった七海は、遅く起きた後ネイルサロンで爪を整えてから、指定されたレストランに向かう。莉里子からの事前のLINEによると、女3人、男3人の計6人。
『莉里子:メンバーは私、七海さん、あとサリナ』
サリナは、莉里子と同期のCAだ。
『七海:え、サリナなの?別にいいけど、サリナかぁ…』
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第3話:あえてドレスを脱ぎ、制服になって…?CAが“イイ男”を見つけるために披露宴会場でしているコトとは
琴子のために同僚6人で披露するのは、CAの結婚式ではお馴染みの“寿アナウンス”だ。
「琴子の旦那さんは、慶應の医学部出身、実家の病院を継いだ開業医だよ。ってことはー?」
同期の1人の言葉に、数人が声を揃える。
「ゲストもお医者様ー!」
おろそいのブライズメイドドレスに身を包み、女子校の部活さながらの円陣を組むと、「よっしゃー」と声を揃える。その輪に加わりながら、七海と莉里子はお腹を抱えて笑った。
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第4話:「見てはいけないものを、見てしまった…」CAがステイ先のホテルで目撃した禁断のモノ
どのくらい経っただろう。目が覚めると、窓の外はすっかり暗くなっている。スマホを手にすると、LINEに同じ便のクルーたちから食事の誘いが来ていたが、七海は気づかず眠っていたようだ。
「あー、みんなどこか食べに行っちゃったよね。しょうがない…ラウンジで何か食べよう」
髪を束ね、身支度を整える。ショルダータイプの小さなル プリアージュに財布とスマホを入れた。
そして、部屋のドアを開けた時、思いもよらない光景を目撃してしまったのだ。
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第5話:「え、そんなことで離婚したの?」35歳女が許せなかった“夫の生活習慣”とは
― にしても、梨奈さん雰囲気変わったような気がする。丸くなったっていうか…。
「梨奈さんとご一緒するの、久しぶりですけど、雰囲気変わりましたよね?あ、全然変な意味じゃなくて!」
思ったことを口にしてはみたものの、慌てて取り繕う。
「いいのよ。そう、変わったかもね。私、最近離婚したから、そのせいかも」
ギャレーに搭載しているドリンクをチェックする梨奈の手が止まった。
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第6話:「え、物価が高すぎ!」寿退社しニューヨーク駐在妻になったものの、こんなはずじゃなかった…
18時30分に『Grand Central Oyster Bar』に着くと、瑞穂はすでにバーカウンターでシャンパングラスを傾けていた。
ここはかつて夏休みを利用して2人で旅行に来た時に入った思い出のレストランだ。今夜も新鮮な牡蠣を求め、観光客やニューヨーカーたちで賑わっている。
「瑞穂ってば、すっかりアメリカに染まったね」
明るいブラウンにカラーリングされた髪、よく日焼けした肌…。2年ぶりに会う瑞穂に、かつて日系航空会社に勤めていた時の、大和撫子的な印象はもはやない。
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第7話:「こんなもの買うの?」ファーストクラスに乗る35歳男。CAも驚く、お金の使い方とは
― あ~どうしよう。なんか話がかみ合う気がしないんだけど…。そうだ、話に困った時は天気の話題!
お客様に声をかける時、話題がなければ天気か現地の予定について聞くことにしている。「お天気よくて、気持ちいいですね」と七海が声をかけようとしたとき…。
七海の様子を気にすることなく、小泉が「じゃ、いきましょう」とエントランスに向かう。
「タクシーでいいですよね?」
「あ、はい!」と答えながら、七海はアテンドを引き受けたことをすでに後悔し始めていた。
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第8話:2ヶ月ぶりに元カレから連絡が。ゴハンに行こうって言われたけど、これってどういう意味?
「ねえ、早希ってばさっきからぼーっとしてどうしたの?」
早希は25歳。色白で華奢、日頃から元気が弾けるようなタイプのCAではないが、美人だからお客様からもしょっちゅう声をかけられている。
「断るって難しいですね…」
そう言ってため息をつく。
「聞くけど?」と莉里子が言うと、「あの…キャプテンなんですが…」と早希が口を開いた。
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第9話:気になる彼から、突然旅行に誘われて…。迷った挙げ句行くことにしたら意外な展開に…
― 普段と違うってこんなに解放感があって、リラックスできるのね。
今日と明日は、仕事やプライベートの気になることをすっかり忘れ、箱根を満喫しようと思っている。
日常を切り離し、自分を癒すことに集中したい。七海がそう思うのには、理由があった。
さっきからバッグの中で、ブルっと震えてはメッセージの受信を伝える七海のiPhone。既読にはしていないが、メッセージの送り主はわかっていた。
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第10話:彼と箱根に行った翌日、目覚めたら1人だった!スマホには、彼からのメッセージが…
「あれ、もう朝?」
障子の向こう側、つまり窓の外はすでに明るい。少なくとも早朝ではなさそうだ。七海は、慌ててスマホを探し、時間を見る。
「あっちゃー、もう9時!」
昨夜は小泉にもてなされ、美味しい食事とお酒を楽しみ、そして、最後は…かなり酔っていたような気がする。自分の足で歩いて部屋に戻った記憶はなんとなくあるし、小泉に失礼なことはしていないはずだ。
― あの後、小泉さんはどうしたんだろう?
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第11話:「どういうつもり?」デート帰りに抱きしめられたけど進展なし!不安になった30歳女は…
「このあたりで大丈夫です。ありがとうございました」
七海が車を降りると、小泉も車を降り、助手席側までやってきた。
― 「また会えますか?」って聞いていいのかな…。
一瞬迷ったが、そのまま言葉を飲み込む。七海は「じゃあ、また」とその場を立ち去ろうとした。その時。
ふわり、と背後から何かに包まれるような感覚に七海は思わず立ち止まった。
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