
ふぐ×中華という、希有なる出合いがここに
中国料理とすっぽんは、古来より相性の良い組み合わせ。だが、ふぐを使ったひと品となると、寡聞にして知らぬ。
「 なにせ中国ではふぐの流通が禁止されていますからね」。そう話すのは、オーナシェフの薮崎友宏氏。だから修業時代に扱うことはなかったものの、日本人ならではの中国料理を作ろうと一念発起、20代半ばでふぐ調理師免許を取得した。
試してみると、ふぐはハタやアンコウに似たところがあり、広東の技法にマッチする。それでも繊細な味が身上ゆえ、調理にはことのほか気を遣う。
「例えば炒めてみたら、これはふぐじゃなくてもいいのではという結果に。火を入れすぎることなく、特有の食感を活かすよう心がけています」。
中国でもまず出合えぬ料理なのに、薮崎氏はあまりアピールをしていないそう。それは、体にいいものを手頃な価格で提供するのが店のポリシーだから。知られざる逸品とは、このことか。