結婚式の1週間後
「まさか本当に春馬と結婚するとはね…」
結婚式の1週間後、優香の向かいに座る翔平が、あきれたような顔つきで笑みを浮かべる。
翔平は東京医大時代の同級生であり、学生時代に短期間交際していたが、お互いの気の強さから折り合いがつかなくなり別れた。
「春馬とは許婚だったんだろう?優香が親の決めた相手と結婚するなんて…」
翔平がバカにしたように笑う。
「私、意外と押さえるところは押さえるタイプなのよ。あなたとは、違うの。それにしても、翔平が二次会に来てくれるなんて思わなかったな」
「招待されたんだから、そりゃ行くでしょう。それよりも、メシ行こうなんて誘われるとは思わなかったよ」
優香から連絡を入れ、大学時代にも何度か来たことのある『トラットリア・ブリッコラ』で待ち合わせた。
「再会を機に、いろいろ話を聞きたくなったの。そっちの病院はどうなのかとか」
一般的に、医学部の学生は卒業後、2年間の初期研修が終わったあとに大学病院の医局に入る流れとなる。
しかし、翔平は東京医大卒業後、医局に入るのを嫌い、飯田橋にある総合病院に研修の場を求めた。現在は総合診療に携わっている。
「俺はとにかく、人間関係とか、しがらみに巻き込まれたくなかったんだよ。そういった意味では、今のところはすごく居心地がいいよ」
とは言うものの、翔平は以前、「少しでも早く臨床医としてスキルアップして、総合診療医として働きたい」とも口にしていた。
気ままな素振りを見せながらも、翔平は医師としての揺るぎない信念を持ち合わせている。
現状を伝える言葉の端々から、強い好奇心や野心のようなものを垣間見る。
― やっぱり私に似ている…。
会話を交わすほどに、心が共鳴し合うのを感じる。
かつての性格の刺々しさも、時間の経過とともに失せたのだろう。言葉を素直に受け止めることができる。
否が応でも、優香は翔平に惹かれていった。
「もうこんな時間だ。帰らなくていいの?」
時刻は23時を回っていた。
「今日は春馬、当直だから」
「そうか…」
それ以上の言葉は、必要なかった。
心が通い合っている2人は、店を出たあと夜の街に消えた…。
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夜の街に消えた2人は、その後も関係が続いていき…。優香の結婚生活はどうなる?
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この記事へのコメント
融通がきかないとか面白みがないとか、全然許せる範囲!浮気しないでと言いたいけれど。