2022.07.13
プロ夫婦~作られた輝き~ Vol.1唐突な質問に、慎一は面食らった。
― はぁ……。やはり、僕らは理解されないのか。
ふたりは籍を入れていない。事実婚を選んだ理由は、一度結婚に失敗している、美加の希望からだった。
「すでに経験して感じた結婚のデメリットを味わいたくなかったんです。家同士の付き合いや名字変更など行政手続き…などですね。
家計も個々に独立していますし、事実婚のデメリットと言えば、世間体くらいかしら」
美加は淡々と説明をし、ライターも大きくうなずいた。
当初、慎一は籍を入れることを希望していた。それが、一緒に生活を共にする条件だったからだ。
しかし、紙切れ1枚の手続きが必要ないと感じるのは時間の問題だった。
事実、これだけ愛と充実感にあふれた日々を過ごしているのだから、と。
結局、その後もインタビューは事実婚についての質問が中心だった。
憧れのインフルエンサー夫婦の日常についての取材、という名目で申し込まれたものにもかかわらず…。
「やっぱり、事実婚って腫れ物扱いなんだな」
ライターらが去った後、慎一は美加と初台のカフェ『HOFF』を訪れ、お茶がてら反省会をした。
「うん。理由を説明するのも疲れた。私たちは、十分幸せなのにね」
「別姓もそうだけど、それぞれの事情があってそうしているだけなのに…。なぜ、型にはめようとするんだろう…」
美加は、有名な経営者兼読者モデル。さらに、この目立つ肩書に加えて、慎一と子連れ再婚をした。
興味を持たれるのは喜ばしいが、取材はもちろん、知人と接していても、毎回そのことを探られるのはたまったものではない、と慎一は思う。
「だからこその、ネオ・シナジー婚。いいだろ?型にはまらない夫婦だってイメージを付ければ、とやかく言われないだろうし」
「興味を引きやすいインパクトはあるけど、ブランド化しなくても…」
苦笑いをしているが、彼女はまんざらでもなさそうだ。
すでに彼女自身、読者モデル “ユキミカ”として30代のワーキングマザーのアイコン的な立ち位置なのだ。キャッチコピーを付けられるのは、多少慣れているのだろう。
「新しい常識を一般化するには、ロールモデルと、刺さるキャッチコピーが必要なんだ。それをプロダクトするのが僕らに求められる役割じゃないかな」
慎一の自信満々にキラキラ輝く瞳を、美加はうっとりと見つめている。
そんなとき、美加のスマホにハウスキーパーの江間里実から連絡が入った。7歳になる娘・華が英会話スクールから帰宅したという連絡のようだ。
「あら、里実ちゃんから連絡。華が帰ってきたって」
「じゃあ、早く帰らなきゃね。彼女も予定があるだろうし…」
「そうね。今日のゴハン、なんだろうー」
美加は、少女のような無邪気さで、慎一の右腕に自分の腕を絡ませ、店を出る。
街ゆく人々は、雑誌から出てきたようなふたりを見て、誰もが一度は目を止める。彼らの存在を認識して指さす者も多い。
― 僕らの関係をとやかく言うなら、この幸せを見てから言ってほしいもんだ…。
我慢しない、強要しない、個人を認めること。
この3つは、慎一と美加夫婦の決まり事だ。
だからこそいい関係が成り立ち、絵に描いたような夫婦像を表現することができているのだ、と慎一は思った。
「―あれ?」
慎一のスマホが振動した。
美加のスマホに業務上の連絡が入ったと同時に、慎一のスマホにもハウスキーパーの里実からメッセージがあったのだ。
「…」
慎一は、その文面を目にし、美加には画面が見えないよう、慌ててスマホをポケットにしまった。
▶他にも:「僕と別れたら、人生終わりだろ?」妻を裏切った夫が、離婚話の最中に見せた冷酷な本性
▶Next:7月20日 水曜更新予定
自立し高めあう憧れカップルのふたり。しかし、その裏で夫は…
この記事で紹介したお店
ホフ
似たような、意味不明でぶっ飛んだ内容にはなりませんように〜。
今後の展開に期待したいけれど…
ちょっと回りくどい表現が多かったり、一分が長過ぎる、修飾語が多いetc…, その辺り改善されれば良いと思いました。
【プロ夫婦~作られた輝き~】の記事一覧
2022.09.28
Vol.13
「私たち離婚します」生配信での発表に視聴者から夫への非難が集中。その理由とは
2022.09.27
Vol.12
仲良し夫婦だって、他人に言えない秘密を抱えている「プロ夫婦~作られた輝き~」総集編
2022.09.21
Vol.11
元妻の家に行ったら既に別の男がいて…。その光景を見た元夫が思わず取った行動とは
2022.09.14
Vol.10
高級マンションの最上階が汚部屋だった…。家政婦が見てしまった、美人妻の裏の顔
2022.09.07
Vol.9
仲良し夫婦を装っているが、裏はドロドロ。「おままごとみたいな家族」を続ける30歳男の本音
2022.08.31
Vol.8
「妻のことを嫌いになりたい…」ホテルでの食事中、夫が密かに考えていたこととは
2022.08.24
Vol.7
「浮気相手との子を一緒に育てて」狂気を帯びた妻からの提案に、夫が出した答えとは
2022.08.17
Vol.6
「お腹の子の父親はあなたじゃない」最愛の妻の告白に絶句する夫。悲しみのあまり夫は…
2022.08.10
Vol.5
「妊娠したの…」妻から告げられたおめでたい知らせ。夫がソレを喜べない理由
2022.08.03
Vol.4
「我慢できなくなっちゃった」甘い囁きとともに抱きついてきた女。困惑した既婚男は…
おすすめ記事
2022.05.05
ハイスぺでも、お断りします!
ハイスペでも、お断りします!:「今どのくらい貯金してる?」彼氏の本性が現れた交際3ヶ月目の出来事
- PR
2025.03.31
結婚1年目から、激務のせいでギスギス…。崩壊寸前のパワーカップルを救ったアイテムとは?
2018.08.11
35歳のヤバい女
35歳のヤバい女:人妻がなぜモテる...?食事会で判明した、女の意外なヒエラルキー格差
2017.01.13
港区おじさん
港区おじさんが編み出した「港区女子適性診断」。貴方はいくつ当てはまる?
- PR
2025.03.31
えっ、あの“ミャクミャク”の部屋に泊まれる!?どっぷり万博に浸れる、いまだけのホテルステイとは…
2016.12.18
由香の秘密
由香の秘密:SATC好きの女がモテないなんて、嘘。港区男子を手玉にとる女の言い分
- PR
2025.02.12
【豪華プレゼントが当たる】「所有欲が掻き立てられます…」人気セレブ夫婦が魅了された“マセラティ”の車とは
2025.03.31
1LDKの彼方
待ち望んでいたプロポーズをされた30歳女。しかし、その瞬間感じた違和感とは
- PR
2025.03.27
7種類ものフレーバーが楽しめる! この春、台湾生まれのフルーツビールが話題!
- PR
2025.03.28
ほろ酔い美女の正体とは!?17LIVEの人気ライバー4人を、港区のバーにお連れしてみたら…
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2025.03.19
運命なんて、今さら
初めて彼のマンションを訪れた28歳女。しかし、滞在10分で、突然「帰りたい」と思った理由
2025.03.22
男と女の答えあわせ【Q】
「豊洲に住んでいる」と33歳男が言った途端に、デート相手の女が戸惑ったワケ
2025.03.23
男と女の答えあわせ【A】
「年収800万くらいでもいいかな…」相手に求める条件を妥協したつもりの30歳女の大誤算
2025.03.17
1LDKの彼方
「何もないって言われたけど…」彼氏が他の女と連絡を取っていたことが発覚。30歳女は思わず…
2025.03.20
TOUGH COOKIES
「幸せそうな彼女がなぜ?」SNSで悪質コメントの犯人を突き止めたら、意外な人で…
この記事へのコメント