新卒では、大手IT企業に入社した。若手が多く、活力のある社風に惹かれたからだ。
「よし、若いうちは仕事も頑張るぞ~」と意気込んではいたけれど、当時は起業するつもりなんてさらさらなかった。
でも…そのIT企業では、30代で多くの人間が退職していった。
理由は、起業。
少しずつ仕事の楽しさを覚えた私にとって、自由な世界へと、更に大きな目標へと向かって羽ばたいていく先輩たちの背中は、それはそれは眩しかった。
あのインタビュアーが私に向けた眼差しと同じ目で、きっと私も彼らを見つめていたのだろう。
そして、私が社会人2年目のとき、仲の良かった女の先輩が起業した。身近な女性が起業したという事実は、私の背中を大きく押した。
彼女は女性向けメディアの立ち上げに奔走。会社員時代よりもギラっとした光を放ちながら働くその姿が、どうしようもなくかっこよく見えてしまったのだ。
― 私も、そっち側に行きたい。
直感的に、そう思った。
彼女の背中を追って私が起業したのは、その1年後のことだ。
「こんなアプリあったらいいな」という、ふとした自分の思いから、美容系アプリとサービスを展開した。
インタビューで答えたことに嘘はない。
本当に右も左もわからない中で、五反田の小さなワンルームでひとり事業計画書を書き、資金調達に奔走し、自分の描くサービスを実現するために必要な人材をひたすらコネを使って探し回った。
最初は私の頭にしかなかったふんわりとした空想が、現実味を帯び、ビジネスとして徐々に形になっていく。
自分の手で人生を切り開いている。自分の手で社会を変えるかもしれない価値を作り出している。
起業当初のそんな感覚や手応えは、ワクワク、高揚感、そんな陳腐なものじゃ表現しきれない。とにかく、生きているという実感が、そこにはあった。
それから3年、私は必死に働いた。
会社は堅調に業績を伸ばし、年商3億を稼ぐまでに成長。社員も3人雇うまでに至った。
憧れだったはずの先輩は、いつのまにか結婚して専業主婦になっていたけど…。もうその頃には、先輩のことなんて気にしていない自分がいた。
面識のない、他の起業家の先輩たちからも、私は何かにつけて繋がりたいと言われる側の人間になっていたのだ。
間違いなく、私は成功した。
けれど、そのとき、私はボロボロだった。
この記事へのコメント
読めて次のページに行こうしてもまた開かず、朝からイラッとしてしまった。
あの金曜のやたらつまらない年収8桁女連載と被る〜。せめて、あちらの連載が終了したタイミングの方が良かったんじゃ?? でもまぁ、こちらの連載の方が面白くなりそうかな、期待てます。