東京レストラン・ストーリー Vol.12

彼女が人妻になる前に、どうしても"アソコ"へ行きたい…。男がタクシーを飛ばして向かった先とは



息つく暇なく仕事をしていたら、約束の30分前になっていた。

予約をしていた花束を急いで引き取り、タクシーに乗り込むと、彼女から連絡がきている。

『もうすぐ着くよ!久しぶりに楽しみ〜!』

― こんな連絡にクスッと笑みが漏れるのも、これが最後かもしれないな。

彼女は、僕ではない男性と婚約したのだ。

「あのね、私プロポーズされたの…!」

仲間内数人でランチへ行ったときに、彼女から突然の報告。嬉しさをどう表現していいのか分からない…そんな表情だった気がするのは、自意識過剰だろうか。


もう叶わない恋の相手なのに。

あの日の心臓が張り裂けそうだった痛みや、男としてもっと成長してやるという焦燥感を、今でも鮮明に思い出す。

もうすぐ人妻になる彼女との食事は、カジュアルすぎても、フォーマルすぎても変だと思ったから、初めて彼女を紹介された場所にした。

彼女は、その店のミルクレープが大好物。食後に頼んだバナナのミルクレープを、満面の笑みで食べていた彼女の笑顔を見て僕は、彼女に恋をしたのだ―。

そんなことを思い出していると、今日約束していた、麻布十番の『ピッコログランデ』に着いた。

店に着くと、彼女はすでに席に座っている。

「すみません、待たせて!」

「全然。私も今きたところだよ」

当時からずっと変わらない、顔をほころばぜながら迎えてくれた彼女を目の前に、今夜は最高のディナーになる予感がした。


奈津(28)若くて未熟だと思っていた優也が、いい男になるなんて…。


優也との出会いは、友人からの紹介。

何度か複数人で食事に行っていたが、優也は私と2人で飲みにいかないかと頻繁に誘ってくるようになった。

「俺、奈津さんのことが気になります!」

もう4年位前のある日のことだ。渋谷で飲んだ帰り道、優也に告白された日を思い出す。

― 可愛いな…。

女子大生のころは年上の男性にチヤホヤされ、社会人になってもその状況はあまり変わらず、毎週いろいろな男性と都内の名店でデートをしていた。

そんな生活を送っていたので、まっすぐに告白してくる優也をひたすら“若い”と感じ、年下の男友達以上には考えられない。

もちろん告白はすぐに断った。

それでも優也は、めげずに何度も食事に誘ってくる。彼を可愛いな…とは思ったが、付き合うとかそういうことは考えていなかったのだ。

だが彼は思いもよらず、どんどんイイ男に成長していった。

この記事へのコメント

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No Name
憧れの人がいるから仕事も頑張れるって、なんか単純にいいなぁと思いました。
2022/05/16 05:3783返信7件
No Name
誰かと食事に行くのを楽しみに働こうって大事だね。人はパンのみにて生くるに非ず。
2022/05/16 05:3752
No Name
ピッコログランデ、いいねぇ。朝から美味しいパスタが食べたくなった。
2022/05/16 05:3930返信1件
No Name
常に眠いとか仕事のスピードがどうこううるさい男だなw
2022/05/16 06:028返信3件
No Name
下ネタっぽい題名だけど話は素敵✨
2022/05/16 06:567返信1件
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