トラップ~嵌められた男と女~ Vol.9

2年前に別れた元カレを忘れられず、職場まで押しかけた女。そこで見てしまった衝撃的な光景

恋に落ちると、理性や常識を失ってしまう。

盲目状態になると、人はときに信じられない行動に出てしまうものなのだ。

だからあなたもどうか、引っ掛かることのないように…。

恋に狂った彼らのトラップに。

▶前回:男と一緒に住んでいながら、御曹司との結婚をたくらむ29歳女。予想を遥かに上回る、その理由とは


「お父さん、お母さん。こちらが、今お付き合いしている良助さんです」

日曜日の昼下がり。私は半年ぶりに、京都にある実家へ帰省した。

「よく来てくれた。良助くんは保井商事にお勤めらしいね。菜々、優秀な彼でよかったな」

そう言って嬉しそうにしている父を見て、私はホッと胸を撫でおろした。

関西の大手通信会社で役員をしている父と、専業主婦の母。1人娘として育てられた私は、昔から父に「しっかりした男と結婚しなさい」と言われ続けてきた。

だけど、今まで私は“しっかりした男”とばかり付き合ってきたわけではない。良助と出会う前に付き合っていたのは、小さな劇団で夢を追いかける5歳上の誠也だった。

彼を知ったキッカケは、父の机に置いてあった1枚のチラシからだ。

「誰これ、カッコイイ…!」

舞台告知のチラシの中で、笑顔を振りまく誠也。彼は劇作家にもかかわらず、どの俳優よりもイケメンに見えた。

― この人に会ってみたい。

私はこっそりチケットを買うと、誠也が手掛ける舞台を見に行った。そしてルックスだけでなく、彼の作り出す斬新で痛快な物語の虜になったのだ。

それから私は、誠也が脚本を担当した舞台はすべて観劇。猛アプローチの末、彼と付き合うことになった。

しかし誠也は、何年経っても売れない劇作家から抜け出せなかったのだ。そんな彼を厳格な父に紹介することは、到底できなかった。

結局私は、将来性のない誠也に見切りをつけて別れ、良助と付き合うことを決めたのだった。

そんな過去を思い出していた、そのとき。ふいにスマホが震えた。

誠也:来月、大きな舞台決まった。

2年ぶりのLINEに、ドクンと心臓が高鳴るのを感じる。添付されているリンク先は、1,000人以上の観客が収容できる大劇場だ。

私は咄嗟にスマホを裏返すと、動揺を隠すようにコーヒーをすすった。

「菜々、どうしたの?」

母が心配そうに、私の顔を覗き込んでくる。

「なんでもない…」

私は高鳴る心臓を押さえ、作り笑いを浮かべた。

この記事へのコメント

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No Name
もし菜々が結婚したいって誠也を連れて行っていたらどうなっていたか...。怖いけど興味あるかも。
2022/05/03 05:1994返信1件
No Name
お父さんが昔付き合ってた人、既婚者で息子がいる女性と読んだときに、すぐ誠也母と分かってしまったわ。
2022/05/03 05:1556返信2件
No Name
あれ、同じような話読んだことある!
2022/05/03 05:1830返信4件
No Name
声かける前にわかって良かったじゃない
だけど、人の仕事を見下すような男と結婚するのもどうかと思うし…
このあとどうするのかな?
2022/05/03 07:3528返信1件
No Name
鈴木誠也の顔がちらついて話が頭に入ってこないのだが
2022/05/03 05:4718返信1件
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