
身体の芯から温まる古都が育む睦月の美味
しんしんと冷え込む京の冬――。その厳寒が生んだ古都の美味が、ご覧の“かぶら蒸し”。雪の白さをかぶらの純白で見立てた、玄冬の味の風物詩といっていいだろう。
すりおろしたかぶらを具に乗せて蒸し、銀餡をかけて食すこの料理に、欠かせないかぶらといえば京野菜の聖護院かぶらがなじみだが、「うちで使うのは、昔から近江かぶら。こちらの方が、かぶらならではの甘い香りが強く、きめ細やかですね」とは、京料理『と村』の主人、戸村仁男氏。
聞けば、聖護院かぶらのルーツともいえる由緒正しき存在で、旬は11月~2月頃。滋賀県は大津市尾花川地域を中心に栽培されてきた、やや扁平な形が特徴の大きな白かぶである。
寒さと共に増すかぶらの甘みと香りを楽しむ料理だけに、余計な具材は一切無用。ここ『と村』のそれは、出汁の風味豊かな銀餡におろしたてのかぶらの清々しい香り、そして具に若挟ぐじのみの潔さ。やはり冬が旬のぐじの優しくも品のいい身と脂が、はんなりとした旨みのヴェールとなり、かぶらの風味を引き立てる。これぞ“かぶら蒸し”の真骨頂。身体の芯から温まる冬のご馳走である。