原石は磨かれて、キラキラ輝く宝石になる。それは、女も同じ。
整った肌も、潤った髪も、洗練されたネイルも、全て自分をキラキラ輝かせるための投資。
…そう、投資だと思ってた。
“自分磨き”に余念がない彩華は、今年27歳で独身・彼氏ナシ。だが最近、ついに理想のハイスペ男性との出会いを果たす。
けれど自己流の自分磨きでは叶わない恋があることに気づき…?
彩華(27)「美容とファッションは“女”の必要経費」
「ふぅ〜、ちょっと休憩…!」
クライアントへの対応を終えた彩華は、MacBook Airの画面をTeamsからECサイトへ切り替えた。
「やっぱ、プラダのローファー買っちゃおうかなぁ…」
そうつぶやきながら、カフェラテを口に運ぶ。最近リモートワークをしているここ渋谷の最新カフェで、彩華は決まって一番人気のオーツミルクのラテを頼む。
お気に入りの場所でハイブランドのアイテムを見ていると、仕事の疲れなんてあっという間に吹き飛んでしまうのだ。
― はぁ、幸せ…♡あっそうだ、春にむけて髪質改善のトリートメントもそろそろ行かなきゃ。
そんなことを考えながら二口目のラテに口をつけようとした時、バッグの中のスマホが震えた。
確認すると、2通のLINEがほぼ同時に届いている。その送り主を見た彩華は、思わず声を上げてしまう。
「ええっ、よりによって何でこの2人からなの?」
1通目のLINEは、彩華が今夢中になっている男性・明さんから。
マッチングアプリで出会った、外資系コンサル会社勤務の32歳。海外大卒の帰国子女な上にイケメンという、夢に描いたような超ハイスペ男性だ。
<明:彩華ちゃんの新しいネイル、センスいいね!似合ってる>
先ほど送った新しいネイルの写真を優しく褒めてくれる内容に、思わず口元が緩む。
― はやく2回目のデートに誘ってもらいたいなぁ。もっともっと自分磨きを頑張らなくちゃ!
だが次のメッセージをチェックした途端、彩華は一転、緩み切っていた口元をへの字に曲げてしまった。