好きって言わせたい!~正反対のふたり~ Vol.1

好きって言わせたい!~正反対のふたり~:容姿と性格が真逆の美女ふたり。そこに御曹司が配属されて…?

一ノ瀬英琉は社長の息子で、この会社の跡取りだ。そう、正真正銘の御曹司なのだ。

去年入社し、今は社内のさまざまな部署をまわって勉強をしているらしい。

「まあ、そんなに難しい仕事は教えなくてもいいからさ。面倒見てあげてよ」

部長がここまで話し終えると、近くに座る女性社員たちから一斉に鋭い視線が向けられた。

― ちょっと、何なの?こっちは忙しいなか、仕事を押し付けられて困ってるのに!

だが、社内報で英琉の写真を目にした瞬間。みんなの浮かれようや、嫉妬の混じった視線の理由がわかった。

― ふーん、確かにイケメンかも。それに独身なんだ。私は仕事さえしっかりこなしてくれれば、それでいいかな。

自分の作業に加えて、彼に割り当てる業務のことを考えると、仕事量の多さに再びため息が漏れてしまうのだった。

そして、ますます忙しくなることを覚悟しながら迎えた、2月1日。

「一ノ瀬です。3ヶ月間、よろしくお願いします」
「長谷川です。早速ですが、この資料に目を通してもらってもいいですか?」
「はい、わかりました!」

礼儀正しい受け答えと人懐っこい笑顔は、想像していた“社長の息子”のイメージとは違って拍子抜けした。だが、それと同時に、完璧で欠点が見当たらない男性は苦手だと思ってしまうのだった。


~一ノ瀬英琉(29)の不安~


父の会社に就職したのは、去年のこと。

僕はいずれ跡を継ぐつもりでいたが、それまでに一度、菓子類のバイヤーをしてみたいと思っていたので、ドイツやベルギー、フランスなどを転々としていた。

しかし、海外渡航中に父が体調を崩したと聞き、慌てて帰国。それからは、この大手製菓会社のさまざまな部署をまわって、将来のためにいろいろと勉強している。

いよいよ明日からは、広報部での仕事が始まる。

「一ノ瀬さん、次は広報部に行くんですよね?いいなあ、美人に囲まれて働けるなんて」

商品開発部でお世話になった3つ年上の男性社員が、羨ましそうな目で見てくる。

― そうか、広報部は女性が多いのか。うまくやっていけるといいんだけど…。

実を言うと前の会社では、自分が製菓会社の社長の息子だと知れた途端、女性社員の僕を見る目がガラッと変わったのだった。“肩書”があることで、こうもいきなり態度が変わるのかと、背筋が冷たくなるような思いを経験した。

だが、そんなことも言っていられない。父の会社で働くとなれば、これまで以上に好奇の目で見られることも増えるだろう。

現に、これまでに配属された人事部や営業部、この商品企画部でも変に気を使われたり、取り入ろうとしたりしてくる人はいたわけで、部署が変わるたびに妙な緊張感につきまとわれるのだった。

― とにかく、面倒なことが起きないように、当たり障りのないフラットな態度でいこう。

こう気持ちを新たにして、迎えた2月1日の朝。

広報部のオフィスへと足を踏み入れた僕は、強めのメイクを施した女性社員たちと、さまざまな香水が入り混じった強烈な匂いのする空間に、しょっぱなから面食らった。

一方で、僕の教育担当を任された長谷川七瀬という女性社員は、シンプルな服やメイクが控えめな印象なのだけれど、態度がどうも冷たい。

季節は、もうすぐバレンタイン。

製菓会社にとって特に忙しいこの時期を、僕はこの部署で無事に乗り切ることができるのだろうか。


▶他にも:年上との恋愛に疲れた33歳独身女。食事会で出会った男に意外な対応をされてしまい…

▶NEXT:2月10日 木曜更新予定
紗良と七瀬、そして御曹司の英琉。大手製菓会社の広報部で、恋の嵐が巻き起こる!?

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この記事へのコメント

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No Name
私は完全に七瀬推しです。
2022/02/03 05:1899+返信1件
No Name
沙良、鏡見て遊んでないで仕事しろ!
2022/02/03 05:1786返信4件
No Name
実家暮らしだから家賃や光熱費はかからない上に、朝晩母の手料理付き。ということは、実家にお金1円も入れてないと言う意味だよね。やば過ぎる。
チヤホヤされても本命には選ばれないタイプだな。
2022/02/03 05:4783返信24件
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