『オーガニックとか、笑える。どうせ嘘でしょ』
― 何これ…。どういうことだろう…?
麻紀は、デザインはもちろん、材料にも並々ならぬこだわりを持っている。オーガニックや天然素材を使用するだけでなく、環境に配慮した染料や染め方、また工場の労働環境なども重視してきた。それなのに、どうしてこんなことを…?
― まぁ…たまにあるアンチだよね。嘘なんてついてないし、気にしない。
自分自身にそう言い聞かせると、そっとアプリを閉じ、寝る準備を始めた。
◆
数日後。
「わぁ。こうやって会うのは久しぶりね!」
パレスホテル東京にある『グランドキッチン』で、保育園で知り合ったママ友たち4人とのランチ会。平日に集まれるのは、リモートワークのおかげ。とは言っても、こうやって皆で食事をするのは3ヶ月ぶりだ。
保育園での保護者同士のつながりは幼稚園に比べて希薄だと聞いていたが、お誕生日会や園での催し物を通じて、麻紀にも仲の良いママ友ができた。
「麻紀さん!雑誌、なんで教えてくれなかったの?他のママさんに聞いてビックリしたよ。麻紀さんが載ってるんだもん!」
南田陽菜は、美しくセパレートされた長いまつげを瞬かせながら、明るく話しかけた。彼女からは、ふんわりと可愛らしく清楚な雰囲気が漂っている。
「えー、そうなの。なんて雑誌?電子書籍で買えるよね?」
せわしなく自分のスマホを取り出し、電子書籍で麻紀が出た雑誌をチェックするのは、進藤理絵。
夫の寛人と同い歳の彼女は、外資系IT企業で働いている。美人で思ったことを明け透けなく口に出す、サバサバとした性格の理絵。だからなのか、人によってはキツイ印象を持たれやすい。
そこへ少し遅れて、永本恵がやってきた。
「ごめんね、遅れちゃって。何の話してたの?」
恵は子どもが2人、フリーランスでUI/UXデザインをしている。真面目だが、たまに面白い皮肉を言って場を和ませてくれる。
「それがさ、麻紀さんが雑誌に載ったって言うから…」
「いやいや、小さな記事だし…。それより皆、何頼む?」
友達に目の前で見られた麻紀は、なんだか気恥ずかしくなってしまい、すぐに話を逸らす。
ママ友とはいえ、麻紀たちは名前で呼び合うことにしている。これは進藤理絵からの提案で「〇〇君ママって呼ばれちゃうとさ、なんか寂しいんだよね」と言う彼女の気持ちに共感したから。
しばらくして、ホールスタッフがオーダーを聞きにきた。
皆が注文を済ませるなか、麻紀は飲み物について「カフェインレスのものってありますか?」と店員に尋ねる。
「あれ、麻紀さんってカフェイン取らないんだっけ?」
「いえ、実は…」
どうやって切り出そうか、と思っていた麻紀は、恵の言葉をきっかけに今妊娠5ヶ月であることを告げた。
「えー、全然気がつかなかった。おめでとう!」
「わー、そうだったの?もう男の子か女の子か、わかったの?」
パッと場が沸き立ち皆に祝福された麻紀は、内心ホッと胸をなでおろしながら、笑顔でお礼を言う。
その後は、子どもの習い事の情報交換やたわいもない日常の話で、終始楽しく過ごした。
◆
バタバタとした1日を終え帰宅し、習慣となっている会社のInstagramをチェックした麻紀は、一気に全身の感覚がなくなっていくのを感じた。
『はっきり言ってぼったくり。社長も最低な人間。詐欺みたいな会社』
いくつかのコメントに混じった、悪意のある言葉。
― こんな強い憎悪を感じるコメントは初めて…。でも、どうして…?
これが、この先に訪れる大きな悪夢の、ほんの小さな兆しだった。
▶他にも:「ごめん、魔がさした」夫のスマホに密会を匂わせるLINE…。幸せな家族を襲った危機
▶NEXT:2月5日 土曜公開予定
麻紀の会社のInstagramに、悪意あるコメントがどんどんと増えていく…
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この記事へのコメント
・2人目がほしいができない
・姑が育児に口出し、麻紀の商品が欲しくても買えない
・母親になった途端旦那に浮気されたか、旦那がモラハラDV男で家庭が崩壊している
この辺かな