熟成肉職人名鑑 Vol.2

熟成肉職人名鑑:『ローブリュー』櫻井 信一郎に迫る

櫻井 信一郎 52歳

時間と、自然と、愛情とが醸し出す味を。

バスクでの修業を通じて、ヨーロッパの豚食文化に心酔した櫻井信一郎シェフ。ここ青山に『ローブリュー』を開いて早や11年。今では、豚肉料理といえば、まず同店の名が挙がるほど、グルマン達の舌をとらえている。

「豚耳のパン粉焼き」といった内蔵料理から、豚肉本来の旨みをストレートに引き出した「豚肩ロースの炭火焼」まで幅広くそろえる豚料理の中でも、櫻井シェフ自身とりわけ思い入れの深い一品が、自ら手塩にかけた生ハムだ。

「すぐに結果が出ないところがいいんですよ」。ふっと呟くように口にした言葉通り、仕上がりまでおよそ1年半。時のゆりかごと、自然の営みに歩調を合わせるところから生み出される美味なのだ。

毎年、仕込むのは8本程度。まず5週間に及ぶ塩漬けから始まるのだが、それも前漬け、本漬けと2段階にわける手のかけよう。2週間塩抜きした後、夏でも夜は冷涼な長野県東郷市の山荘で乾燥させること10ヵ月。昼夜の寒暖の差が激しい気候と涼風が、肉の水分を程よく抜き、熟成への準備を整えてくれるのだ。

熟成庫は店内のワインセラー。半年の熟成を経た生ハムは、ほのかにベリーの風味を漂わせつつ、上質のグリュイエールチーズのような熟成香を醸し出す、オンリー・ワンの逸品である。

右.「自家製生ハム」¥2,520 『オー・バカナル』時代から作り始めて14年余り。「最初は、乾燥させるものの、熟成のさせ方がよくわからず失敗の連続だった」とか。試行錯誤の末、今のスタイルに。人気メニューゆえ品切れも早い。今年も残りあと4本。夏前にはなくなりそうだ 左上.「今冬は、バスクのキントア豚も1本仕込みました。来年の5月には出来上がります」と今から楽しみでたまらない様子の櫻井シェフ

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