盛りラブ Vol.5

待望のイケメンと初デート!完璧なプランに女が失望した“ひとつの理由”とは

― なんで何も言わないんだろう?

芹奈はソワソワしながら、彼の腕にある時計が20時を指す様子をじっと見ていた。

数分経っても瑛太は何も言わない。結局、沈黙の雰囲気に耐えきれられなくなった芹奈がゆっくりと口を開いた。

「…なんか、風強くなってきましたね」

「あ、そうだよね。ごめんごめん」

苦笑いしながら瑛太は「もう行こうか」と言い、フェンスに置いていた手を離し歩き始めた。

「うん」

芹奈はその相づちがぶっきらぼうに響いたのではないかと思って、ごまかすように「綺麗な夜景だね」と言葉を続けた。

だが、実際は拍子抜けしていた。こんなに完璧なデートをしてくれたのに、決定的な言葉がないなんて、と。

「瑛太さん…?」

「ん?」

「いつ帰っちゃうんだっけ」

うつむきながら聞く彼女に、彼は困ったような表情で言った。

「火曜に向こうでアポがあるんだ。だから月曜の夜に帰るかな」

「そっか」

芹奈は今までの1ヶ月間を思い出す。リモートではあったが、彼から「料理作って欲しいな」や「かわいい」と言われてきたのだ。

もはやカップル寸前の関係だと思っていた。だからこそ今日のデートで、告白してもらえると内心信じていたのだった。

― 浮かれてたのかな、私。瑛太さん、このまま帰ってしまうかもしれない。そうなったら…。

もう会えないかもしれない。そんな言葉が頭に浮かぶと、彼女は居ても立ってもいられなくなった。

― 諦めたくない。せっかく見つけた理想の人なのに!

「ねえ瑛太さん…。また会える?」

芹奈は、ありったけの勇気を振りしぼる。そのとき、瑛太の左手が彼女の右手を優しく包んだ。

「ご、ごめん。俺がちゃんとしなきゃね」

瑛太はハッとした様子でそう言うと、手をつないだまま芹奈に向かいあった。

「初めて会った日に、こんなこと言うのは変かもしれないけど」

瑛太の声がかすかに震えている。

「芹奈ちゃんと、もっと一緒にいたい。良かったら、お付き合いしてもらえませんか」

彼の言葉に、芹奈の中の小さな失望がふわっと癒えていく。嬉しくて震える声で「はい」と返事をして、芹奈はにっこりと笑った。


「本当に?よっしゃあ!」

子どものように笑う瑛太。その様子を見て指先まで幸せで満ちた芹奈は、つないでいる手にギュッと力を込めた。

しばらく歩いて大通りに出ると、浜松町の駅を示す大きな看板が目に入った。

「…帰りたくないなあ」

別れが寂しくなった芹奈は、行き交う......


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