あのコはやめて Vol.9

婚約者の実家で目にした「ありえないモノ」とは?次々と暴かれる“自称お嬢様”の驚きの過去

「え…。どこでそんな…」

その狼狽っぷりに、誠は確信を持つ。

― やっぱり、経歴は嘘だったのか…。

しかしながら、気になることが。彼女は現にプロのヴァイオリニストであることは間違いない。

パリ帰りであることは高貴さを演出する要素ではあったが、そんな虚飾は圭一には何の意味がないことだ。

だが、世間を見ると、見栄のためなら何でもする人間だっているくらいだ。彼女もそういった類の女なのだろう。いずれにせよ、人間的に信用はできない。

「咲良の家で中学生の頃の写真を見たんだ。…君が写っていた。彼女は覚えていないようだったけど」

すると、真紀の顔がさらに青白くなった。

「覚えて、いない…?」

「本当なんだね。なら、どうして初対面の時に何も言わなかったんだ。もしや、嘘がバレると思ったから、僕から咲良を離そうとしたのか?」

ガタガタ震え、頭を抱える真紀。誠は目を逸らした。

― またそうやって同情をひくのか。

もうこれで何度目だろうか。窮地に陥ると涙目で見つめる。そんな彼女にはうんざりだ。

「嘘はついてない…。でも、あの頃、私…」

真紀は力が抜けるようにその場に倒れた。店のスタッフが駆け寄ってくれたが、真紀は「大丈夫です」と朦朧としつつ追い返した。

「誠さん。家まで、送って行ってくれるかな…1人で帰る自信がなくて」

「…」

演技であろうと、この状態で置いていくわけにはいかなかった。内緒で会っている手前、圭一にも連絡はできない。

誠は彼女を支え、タクシーに押し込むように乗車したのだった。


広尾にある低層マンションのペントハウスに住んでいる真紀。賃料が三桁を超えるというその部屋は、圭一の実家の豪華さとは違う高級感を醸し出している。

楽器や衣裳の部屋、防音室が設置された部屋、リビング、そして寝室、どれも十分に広さがあり、インテリアもセンス溢れたスタイリッシュなものだ......


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