SPECIAL TALK Vol.82

~ハンドボール文化を日本にも。プレーヤーとしての挑戦は試合だけじゃない~

令和のニューリーダーたちへ

ハンドボール日本代表チームでキャプテンを務める土井レミイ杏利選手。子どもの頃から運動神経抜群だった土井氏は、ハンドボールとの出合いで人生が決まった。

高校・大学とスポーツ推薦を受け、期待どおりの活躍を果たすも、膝の故障により一度は引退。

語学留学のため父の祖国フランスに渡り、プロ選手として奇跡の復活を遂げる一方で、文化の違いによる困難と孤独を味わった。

日本のトッププレーヤーとして、ハンドボール界を牽引する土井氏がこれまで見てきたもの、そしてこの先に見据えるものは何か。

それを知ることは、次世代のニューリーダーたちにとって壁を乗り越える力になるはずだ。

土井レミイ杏利氏 フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生でハンドボールを始める。浦和学院高校、日本体育大学と強豪校でプレーしたのち、語学留学を目的にフランスへ渡る。2012年に1部リーグに属するシャンベリー・サヴォワ・ハンドボールのセカンドチームに所属。そこでの活躍を機にプロ契約を結び、2019年シーズンまでの6シーズン、フランスで活躍。帰国後、日本ハンドボールリーグ「大崎電気」を経て、2021年シーズンより「ジークスター東京」へ。日本代表選手として、さらにはチームをまとめるキャプテンとして活躍している。ハンドボール以外でも、ダンス・楽器演奏・マインドフルネスなどさまざまな趣味を持ち、ショートムービーアプリTikTokでは240万人近いフォロワーを抱える、TikTokクリエイターでもある。


金丸:本日はプロハンドボール選手である土井レミイ杏利さんをお招きしました。土井さんは東京オリンピックの日本代表で、キャプテンも務めていらっしゃいます。お忙しい時期にありがとうございます。

土井:こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。今日は代表合宿の休日なので、いい気分転換になります。

金丸:今日の対談の舞台は、今年3月にオープンした代官山の『WAJO』です。イタリアで11年、ミシュラン星付きの名店を渡り歩いてきたシェフによるイタリア料理、そしてソムリエによるペアリングを堪能できるそうです。

土井:普段、こういうレストランに来る機会がなかなかないので、すごく楽しみです。

金丸:土井さんは以前、ハンドボール界では世界トップレベルのフランスリーグでプレーされていました。そして今シーズンから、私が会長を務めるフューチャーグループのハンドボールのプロチーム「ジークスター東京」に所属されています。東京を本拠地として活動されていて、すでに主力メンバーとして活躍、期待されている選手です。

土井:フランスから戻ってきて、「大崎電気」のハンドボール部で2年プレーしましたが、日本のハンドボールを牽引していこうというジークスターの姿勢にひかれて、移籍を決めました。ジークスターの関係者だけではなく、金丸さんもハンドボールに精通されているので、とても頼もしく感じています。

金丸:私も高校時代はハンドボールに打ち込んでいました。日本ではいまだにマイナーですが、ヨーロッパでは人気スポーツで、フランスでは試合会場に足を運ぶことが一種のエンターテインメントとして成立しています。今日は土井さんのこれまでの歩みを伺いながら、今後、日本のハンドボール界が進むべき道についても語り合えたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

フランスの田舎と千葉の田舎。どちらも経験した幼少期

金丸:早速ですが、土井さんはフランス生まれの千葉育ちだそうですね。

土井:はい。父がフランス人で、母が千葉の多古町生まれです。僕は生まれてから3歳までフランスにいて、その後、母の実家がある多古町に。

金丸:多古町なら、私もゴルフのために何度も訪ねています。

土井:ゴルフ場が多いですからね。田舎だけど過ごしやすいところです。ちなみに祖父は昔、多古町の町長を8年間務めていました。

金丸:いわゆる地元の名士でいらっしゃるのですね。

土井:祖父は母に「多古町から出るな」と言っていたそうですが、母は千葉どころかフランスのパリに飛び出します。父はトゥールーズという街のはずれの、超田舎の生まれです。中学校を中退してパリに行き、14歳から料理の修行を始め、母と出会いました。

金丸:日本の田舎からやってきたお嬢様と、フランスの田舎から出てきた料理人がパリで恋に落ちるなんて、ドラマか映画のようですね。

土井:出会いもドラマチックですよ。パリのデパートで働いていた母が、帰り道、3人くらいの男につけられて。バイクを停めて休憩している男の人を見つけて、「あー、久しぶり!ちょっと乗せてってよ」と、まるで友達に会ったかのように声をかけたところ、危険を察した父がバイクに乗せてくれた。それが両親の馴れ初めです。

金丸:あまりにもドラマチックすぎませんか(笑)。

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