29歳のヒエラルキー Vol.2

地味な女友達を、脇役のつもりで食事会に呼んだら…。「この子、いつもと違う」と女が焦った理由



数日後。

出会いの場には、いつだって気合を入れていく。だけど、今日のメイクする手には、いつにもまして一層力が入る。

絢を呼んでの、商社マンとの食事会だから。

定時になる15分前、化粧室に駆け込み、鏡の前で入念にメイク直しをしてから、食事会へと向かった。


「すみません、遅れました~」

指定されたイタリアンの個室に入ると、すでに男性2人と絢がそろっていた。

パリっとジェルで固められたツーブロックヘアの男性が2人。スーツもばっちり決まっていて、座っている姿からも高身長とガタイの良さが伝わってくる。

今日も“当たり”だ。

―絢、どう?こんな男性たち、普段接することないでしょ?

新たな出会いに対する期待感と、絢に対する優越感。得意な気分に満たされた私は、勝利宣言をするかのように絢の方へと視線を送る。

でもその時、私は奇妙な違和感を覚えた。

改めて、絢をまじまじと見る。頭の先からつま先まで。

この前とは、雰囲気が全く違う。

「梨香子、遅い~。はやく飲もう!」

しばらくフリーズしていた私を、絢が促す。空いている席へと私を促した絢から、妙な色気を感じてしまった。

「…絢、今日なんか雰囲気違うね?」

「そう?この前は大きな商談後だったから、がっつりスーツだったんだけど…普段はこんなんだよ」

そう言って適当に話を流す絢の髪はゆるやかに巻かれ、耳元にはゴールドのピアスが印象的にきらめいていた。タイトスカートにTシャツを合わせ、胸にばヴァンクリのネックレスが揺れている。

スーツのときには気付かなかったけれど、スタイルもかなり良い。ここ3、4年でダイエットでもしたのだろうか。

昔の絢とは似ても似つかない、ハイセンスな良い女がそこにはいた。

想定外の光景にかなり動揺してしまったが、私の向かいに座る男からの熱い視線に、私は慌てて思い直す。

―私だって、全然負けてない。


その日は、私が場の中心になることもなかったものの、絢にだけ話題が集中することもなく、それなりにその場は盛り上がった。

―それに…。

向かいに座る智司さんが、私に向かって終始熱い視線が注ぎ続けていることに気づいていた。

今年35歳で、私の少し年上。変にがっつくこともなく、落ち着いた雰囲気を纏った大人の男性。ルックスも抜群にかっこいいし、老舗企業の御曹司だという。

直接的な言葉をもって口説かれなくても、視線を見れば自分への好意を察することができる。彼は間違いなく、絢ではなく私に興味を示していた。

そして、案の定―

<智司:今日はありがとう!良かったら、今度食事でも行かない?>

解散して数十分とたたないうちに、彼から個人的にLINEが届いた。

<梨香子:私も楽しかったです!是非♪>

やっぱり、そうなのよ。絢に教えてあげなくちゃ。

私は高揚した気分で指先を動かす。智司さん宛の返信じゃない。絢への、牽制のために。

<梨香子:絢、今日は来てくれてありがとうね!智司さんから、食事誘われちゃった!>

LINEを送信すると同時に、達成感が込み上げてくる。

ーこれで分かったでしょ。絢はいつでも引き立て役。私が主役。

調子にのっていた絢が肩をがっくり落としているかと思うと、胸がくすぐられるような気分だ。

絢からの返事は、しばらく時間がたってからかもね。そう考えていたものの、予想に反してすぐに返信は返ってきた。

<すごい!><さすが梨香子>

きっと内容はそんな感じだろうと、当たり前のように思っていた。

けれど、絢からのメッセージの内容が視界に入った瞬間…

私はしばらく動けなくなった。


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絢から返ってきた、衝撃の返信内容…。

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