渋谷物語 Vol.5

誘いを断りきれず、大人の色香漂う街に連れて行かれたけど…。そんな男に、女が心を許したワケ

円山町の魔力


とある昼休み。

社内のカフェテラスでひとり、ランチをとっていた私は『白倉です。』さんのツイートを今日も眺めていた。昨日は前職の上司と、おでんの店を訪れていたのだそう。

『おでん、いいですねー』

気まぐれで思わずリプライしてみた。

すると数分後。

「竹脇さんですよね。返信ありがとうございます」

その声に振り向くと、メガネの男性が背後に立っていた。ラフな服装が多いうちの会社で、量販店で揃えたようなスーツを着ている彼はどこか目立っており、以前から存在は知っていたのだ。

「白倉です」

そう名乗られた途端「ああ!」と、私は笑顔で立ち上がる。まるでスターに会ったような気持ちでテンションが上がった。

彼は最近転職してきたひとつ年上の男性だ。前勤務先も本社が渋谷にあったため、この界隈のグルメ事情には詳しいらしい。

そして隣の席に座るなり、投稿にあったおでんの店について熱弁し始めた。どうやら、相当お気に入りの店であるようだ。

「へー。じゃあ今度、連れて行ってくださいよ」

その気のない社交辞令だったが、ネットの繋がりは私を逃してはくれなかった。


彼が言っていた『おでん割烹 ひで』は、渋谷が長い私でも初めて知る店だった。

会社近くのカフェで退勤後に待ち合わせし、クラブへ向かう若者たちの間を縫いながら、円山町のど真ん中にあるその店へ入る。

風情ある店内は、まるで時代が逆行したかのよう。円山町と聞いて誰もが想像する「大......


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