リバーシ~光と闇の攻防~ Vol.5

社長から渡された、従業員リスト。秘書を戦慄させた、恐怖の中身とは?

轟く怒号


「これ、かわいい!」

翌日。

秋帆は、出社前に銀座を訪れていた。クライアントへの手土産を購入するためだ。

お目当ての最中をピックアップした後、タクシーがつかまるまでと、少しだけ歩いてみる。

GINZA SIXのFENDI前で、つい足を止めてしまう。ショウウィンドウに飾られたバッグがとてつもなくかわいかったのだ。

先日、GUCCIでバッグを買ったばかりだが、このバッグも欲しい。秋帆は、休日に舞い戻ってこようと、誓う。

家賃や光熱費の負担もなく、洋服は黒川が与えてくれる。それでいて月給は手取りで50万円以上あるのだ。バッグのひとつやふたつ、痛くもかゆくもない。

「黒川社長にあげようっと」

銀座に寄ったついでに、秋帆は木村屋でいくつかパンを購入した。昼食もろくに取らずに仕事している黒川への差し入れだ。

秋帆はたまに、こうやって差し入れをしている。自由にバッグが買えるのも、良い生活をさせてもらっているのも、彼のおかげ。ささやかながらの恩返しだった。



11時頃。

オフィスに戻った秋帆は、違和感を覚えた。

― なんか、変…?

普段の喧騒がない。もともとドライな雰囲気ではあるものの、仕事については皆、熱心に話している。だが今日は、しんと静まり返っていて、誰一人会話をしていない。

別のオフィスに間違って入ってしまったのだろうか。そんな錯覚に襲われるほどだった。

音楽を聞いたり、ソファで寛ぎながら仕事ができるオープンスペースもがらんとしている。

それを見た秋帆は、同僚たちが皆机に座ったまま仕事に取り掛かっているという異様な事態に気づいた。

皆、一言も話さず、目の前の画面を見つめていたり、書類を睨んでいるではないか。

― あれ…?

秋帆は、彼らの意識が、別のところに向いていることに気づいた。皆、時折オフィスの奥に向けて視線を送っている。

それは社長室と秋帆の自席がある方向。一体何が起こっているのだろう、と彼女が自席に向かおうとした時だった。

怒号がオフィス内に轟いた。

そのあまりの激しさに秋帆は思わず身をすくめ、手に持っていた紙袋を落としてしまった。


誰かが叱責を受けているらしい。

社長室の中から、黒川が怒り散らしているのが分かった。時折、ガーンと、机か何かが蹴られる音も聞こえてくる。一体何が起きているのだろうか。

― 待って、今って…。

ハッとした秋帆は、スケジュール帳を開く。

経営企画部の彼との面談をし......


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