渋谷物語 Vol.4

彼氏に内緒で、夜な夜な男のもとに通う女。その場で“ある強引な誘い”を受けて…?

「梨奈が大騒ぎするから言えなかったけど、実は、昔から父親を通じて知り合いなんだ。会社辞めたのを言ったら、誘われて」

その言葉に、カチンと来てしまった自分がいた。

― 報道に行くんじゃないの?それに「大騒ぎするから言わなかった」って、バカにされてる感じ。

「ふーん。さすが、恵まれているよね」

よせばいいのに皮肉が出てしまう。恭一は、何かをこらえているようだ。

何となくわかるけど、指摘すると喧嘩になるから言わない。

その直後。ちょうど北見さんからお誘いのメッセージが届いた。…断る理由はなかった。



その日のラウンジは、深夜番組でよく見る芸人さんも来ていた。経営者の誰かが知り合いらしい。

私はむしゃくしゃしていたこともあって、芸人さんに執拗に絡んでいく。すると彼も面白がってくれて、その場が盛り上がった。私のテンションも最高潮で、お酒も進む。

「やっぱ、梨奈ちゃんがいると場が盛り上がるね。呼んでよかった」

ニッコリ笑うと、北見さんは私の肩を抱いた。いい雰囲気になると今夜はヤバそうなので、その手をやんわりと払う。

「コミュ力には自信があるの」

「言うねえ。うちの会社に欲しいくらいだよ。まだショップ店員なの?」

頷くと、北見さんがハッとした表情を見せた。次の瞬間、酔いがさめたような目の色に変わっている。

「実はね、前から梨奈ちゃんのmixi面白いと思ってたんだ。事業拡大して、webマガジンに力を入れようと思っているところでさ。文章上手いから、編集やライターで参加する気ない?」

「え、やるやる!」

容姿と愛嬌以外を褒められることなんてめったにない。考えるより先に、言葉が出ていた。

「じゃあ、前向きに考えておいてよ。本気だから」

北見さんは笑顔で手を差し伸べる。私は気持ち半分でその手を握り返した。




― 北見さんってやっぱりすごい人だったんだ…。

数日後。初めて昼間から北見さんに呼び出された私は、その会社の規模に度肝を抜かれた。

渋谷で1、2を争う大きなオフィスビルの中にある会社。人工芝が敷き詰められた公園のような休憩ゾーンや、カフェのようなワーキングスペー......


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