渋谷物語 Vol.4

彼氏に内緒で、夜な夜な男のもとに通う女。その場で“ある強引な誘い”を受けて…?

Age26. 若いのは今のうち。


恭一は、報道写真に進みたいらしい。

広告代理店は、やりたいことの対極にあるそうで。若いのに企画を任されたり、ハチ公口の大きな看板広告を撮ったりしたのに勿体ない。

彼が言うに辞めた一番の理由は「結局、親のコネで入った会社だから」だそうだ。

― よく言うよ。今も会社のときのつながりで、映画のスチールとか宣材写真の仕事もらってるくせに。

コネは嫌って言いながら、コネが元の人脈を切らないのって、矛盾していると思う。私なんかコネもなんにもないから、就活失敗していまだにフリーターなのに。

「報道に行くんじゃなかったの?結局コネでしか生きられないんじゃん」

ムカついてこの前直接本人に伝えたら、大喧嘩になってしまった。図星なのかもしれない。

さらに売り言葉に買い言葉で、社長さんと遊んでいることを責められた。これは半ばバイトみたいなものなのに。…彼は、時給生活の厳しさを知らないのだ。

そんな感じで最近、恭一とは口論ばかり。だからこの前、勢いでmixiに愚痴ってしまった。彼の足跡がついていたから見ていると思うけど、何も言ってこない。

私たち、別々の道に進む時期なのだろうか。なんだか彼を見ていると、イライラする。

これって、自分に対してのイライラなのだろうか?恭一は自分の意志で先に進んでいるのに、私はなんにもなくて、フラフラしているから。

それとも経営者と日常的に会ってるせいで、彼が小さく見えるから?

いっそ彼のお嫁さんになるって割り切って、お料理とか花嫁修業を頑張る道もあるけれど、私にはできなさそうだ。…常に恭一と同じ目線でいたいから。

彼とは好きなものや考えることが一緒で、まるで自分の分身みたいだと感じる。

よく見る映画や聞く音楽、物の見方や感じ方。彼には共感しかなかった。中学時代に初対面で話が弾んだのも、そういう話題がいっぱいあったからだ。

でも今は、お互いの考えが磁石のように反発し合っている。

そんなわけで、しばらく口をきいていなかったら、恭一が珍しくディナーに誘ってくれた。彼も今の関係に、危機感をおぼえているのかもしれない。


母校・青学の近くにある老舗フレンチ『ラ・ブランシュ』。

在学中は手が届かないお店だったのに、恋人に連れて行ってもらえるようになるなんて。私も大人になったよなあ、と思う。

一皿一皿、こだわりを感じさせる丁寧な味わい。社長さんたちに連れて行ってもらったどのお店よりも、美味しく......


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