リバーシ~光と闇の攻防~ Vol.3

未経験・スキルなしで、月給60万を得た女。その裏に隠された、男との蜜月

疑念


― あ、普通に乗っちゃった…。

終業後。

タクシーに飛び乗った秋帆は、シートに身を沈めながらハッとした。

レストランまでは、約1km。頑張れば徒歩でも行ける距離だし、地下鉄もバスもある、それなのに。

「まあ、疲れてるし良いよね。それに…」

1週間後は、初めての給料日。

月額60万+残業代。税金などを引かれるにしても、かなりの金額が入ってくる予定なのだ。

黒川のもとで働き始め、贅沢な生活を送るようになったことで、秋帆の価値観にも徐々に変化が出始めていた。



「秋帆、東京で働き始めたなんて知らなかったよ。いつから?」

レストランに到着すると、すでにひかりが席で待っていた。白のジャケットをピシッと着こなした彼女は、いかにもキャリアウーマンという雰囲気を漂わせている。

「ついこの間。まだ1ヶ月くらいだよ」

秋帆が答えると、ひかりが興味津々な様子で問いかけた。

「ねえ、どんな会社に転職したの?うちと取引があるんでしょう?」

彼女と会うのは、実に数年ぶり。高校時代は仲良くしていたのだが、大学に入ってからは会う頻度も減ってきて、就職してさらに縁遠くなっていた。

だがひかりは、まるで昨日も会ったかのように話し始め、すぐ二人に昔の空気が戻ってきた。

「ひかりったら落ち着いて。とりあえず、何か頼もう」

秋帆は、こちらの様子を窺っては出たり入ったりしているウェイターにチラリと目をやった。

「ごめん、つい…!メニューもらおうかな」



「でもびっくりしちゃった。こんなところ、よく知ってたね」

ひかりは、グラスをテーブルに置きながら周りを見渡している。

彼女曰く、このレストランは行きたいと思ってはいたものの予約が取れず半ば諦めていたらしい。

「うちの社長がね。予約してくれたの」

ここもまた、友人と食事に行くと話したところ、先日のランチと同じく、黒川が席を確保してくれたのだ。

「社長?そういえば秋帆、どんな会社で働いてるんだっけ」

秋帆が会社名を口にすると、ぴたり、とひかりの手が止まった。

「まさか社長って、黒川さん?黒川隆?」


「そうだよ」

ひかりが働く会社と比べたら、秋帆の会社は規模も小さいし、知名度は低い。それでも彼女が知っているのは、取引先だからだろうか。

するとひかりは、「ねえ」と訝しげに尋ねてきた。

「秋帆って、その会社で何してるの?」

「秘書だよ」

秋帆が答えると、......


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