リバーシ~光と闇の攻防~ Vol.3

未経験・スキルなしで、月給60万を得た女。その裏に隠された、男との蜜月

才能のある自分


それは2日前、クライアント先に向かうタクシーの中での出来事だった。

「午後の予定ですが、13時から人事とのミーティング。その後、営業役員のプレゼン。それから…」

手帳をめくりながら説明していた秋帆は、途中まで言いかけて止めた。

「どうかされましたか?」

顔を上げると、黒川がまじまじと自分を見つめていたのだ。普段はiPadを眺めながら相槌を打つだけなのに、一体どうしたのだろう。

すると黒川は、「遮って悪い」と断りを入れてから続けた。

「いやあ、白田さんは本当に仕事熱心だなあって。昨日のデータ入力も完璧だったしね。感動した」

大げさなほどの誉め言葉に、秋帆の頬がポッと赤くなる。データ入力なんて、大した仕事ではない。

事実、前に働いていた不動産会社でも毎日のようにしていたが、褒められたことなど一度もなかった。

「いえ、あんな仕事誰でもできますから…」

恐縮しながら答えると、黒川は「そんなことはない」と、顔をしかめた。

「前の秘書は、ミスばかりで大変だったんだ。白田さんの完璧さは、もはや才能だよ。特別な存在だ」

“才能”

その言葉に、秋帆は胸の奥がキュッとなった。これまで、自分は何の才能もない、中途半端な人間だと思っていた。だが、黒川と出会って変わった。いつだって彼は、“才能”を見出してくれるのだ。

クライアント先への秘書の同行も、秋帆が初めてらしい。これまでの秘書は、“使えない”という理由で、どこにも連れて行ってもらえなかったそうだ。

「ありがとうございます…」

そう頭を下げながら、秋帆の脳裏にひとつの疑問が思い浮かんだ。

― そういえば、前の秘書ってどんな人だったんだろう…。


「うわぁ…」

タクシーを降りた秋帆は、目の前にそびえたつビルを前に思わず感嘆の声をもらした。

今日の訪問先は、誰もが知る日本の飲料メーカー。そのビルはとても有名で、観光地になっているほどだ。

まさか仕事でここに足を踏み入れる日が来るとは、思ってもみなかった。感激のあ......


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