―20代で結婚するのが、夢だったのに…。
あと1カ月で30歳になる麻里奈は、焦りを感じていた。
誕生日までに彼氏を作ろうと決意し、本気の婚活を始める彼女。果たして1カ月のうちに幸せを掴めるのか…?
これは、30歳の誕生日を目前に控えた麻里奈の、1カ月間の奮闘ストーリー。
6月5日:「えっ、あと1カ月で私30歳になるの…?」
「嘘でしょ…」
それは、ある週末のこと。ウィンドウショッピングをしていた麻里奈は、何気なくスマホ画面を見て、呆然と立ち尽くした。
目に飛び込んできたのは、“6月5日”という今日の日付だ。
― どうしよう。ちょうどあと1カ月で私、30歳になる…。
焦っているのにはワケがある。なぜなら麻里奈の目標は「絶対に30歳までに結婚すること」だったのだ。
コロナ禍ですっかり出会いも減り、藁をもつかむ思いで、マッチングアプリにも登録した。30歳までに何が何でも結婚したいと思っていたのに…。
居ても立っても居られなくなって、麻里奈は、親友の美穂にLINEを送った。
『美穂、聞いて。7月5日の誕生日まで、あと1カ月だって気づいたの。
私、決めたことがある。結婚はさすがに間に合わないけど、せめて30歳の誕生日までに彼氏を作ってみせる…!』
するとさっそく既読がついて、美穂から返信がきた。
『もちろん、応援する!でも、信吾くんのことは諦めちゃったの…?』
信吾は、麻里奈の同期男子だ。前から気になっているものの、彼はとにかくモテる。
しかも、前は会社帰りによく飲みに行っていたが、出社が減った今では、顔を合わせる機会も少なくなり、諦めかけていたのだ。
『信吾はモテるし、私じゃ手に負えないよ…』
返信を打ちながら、ある記憶が蘇る。自分から積極的に頑張ろうとした時期もあったが、以前飲んだときに、信吾が “飾りすぎていないナチュラル系美人がいい”と言っているのを聞いてしまった。
― 明らかに私は彼のタイプじゃないのよね…。やっぱり信吾のことは忘れよう。
『彼のことはもういいの。それより誕生日までに彼氏を作るって決めたから、婚活の極意、伝授して!』