2020.12.25
三茶食堂 Vol.1彼女は、会社の2駅ルール(オフィスの最寄駅から2駅圏内に住めば家賃補助が支給)で三茶に住むようになり、すっかりこの街にハマったようだ。店にはもともと彼女の上司に連れられて来たのだが、1人でも月イチくらいの頻度で来ている。
「真帆ちゃん、いらっしゃい。今日もビール?」
「うん。いつものください」
真帆は誰もいない店内を見渡し、ビールを飲みながら、大げさなため息をつく。
「あぁ..今日もビールが苦いなぁ。それにしても、私はただ普通の恋愛をして、まともな人と結婚したいだけなのに…“普通”の男って、どこにいるんだろう?」
ため息交じりの真帆に、僕はビールに合いそうな、ピンクペッパーと菊の花を散らした「寒ブリのカルパッチョ」を出す。
「結婚できそうな、まともな男性ってどこにいると思います?」
「どこだろうねぇ…意外に近くにいる気もするけど?」
「昔は年収3,000万くらいなきゃイヤって思っていたけど、私も働くから年収の条件は1,000万くらいまで下げたし。家だってこの界隈“でいい”。 顔も身長もそこまで求めていない。年に数回海外へ行って、美味しい物を食べて。そんな普通の条件しか求めてないのになぁ」
その発言に、僕は思わず仕込みの手を止めて真帆を見た。
「“普通”、かぁ…」
「多分私って、客観的に見てまぁまぁイケてる部類に入ると思うんですよ。一応外見にも気を使っているし、仕事して自立もしているし。なのにどうして彼氏ができないんだろう」
古い木製のカウンターに、黄金色のビールが光る。一気に半分くらい飲んだ真帆に、僕は追加で「燻りがっこのポテトサラダ」を出した。
「真帆ちゃん。世の中に、普通の男なんていないんだよ。そしてあなたが求める普通は、普通じゃないんだよ」
真帆(29歳)の場合
「あれ?凌さん?」
金曜17時半。
早めに会社を出て花金を楽しもうとしていた矢先、オフィスから目と鼻の先のところで偶然遭遇したのは、スタートアップ系の起業家界隈でも有名な凌だった。
仕事を通して知り合ったが、爽やかなイケメンで、まだ28歳という若さも兼ね備える彼にファンが多いことはもちろん知っていた。
身長推定175cm(本当はもう少し身長が欲しいけれど、そこは目を瞑ろう)。年収は多分2,000万弱(もうプラス1,000万欲しいところ)。だが顔もそこそこ良く、性格も良く学歴も合格だ。
そんな凌と、実はここ最近、仕事がらみで何度か連絡を取り合っていた。
彼は「仕事に一生懸命な子がタイプ」と言っていた。それはまさに自分に当てはまると思っていたし、打ち合わせを兼ねて何度か行った食事で、私たちの距離はグンと縮まっていた。
「おぉ、真帆ちゃん」
「こんな所で凌さんに会えるなんて、嬉しいなぁ♡」
偶然の出会いに、思わずテンションが上がる。
「凌さん、この後お時間ありますか?良ければ一緒に飲みにでも…」
だが私が話しかけると同時に、向こうから異常に顔の小さな女が近づいてきた。
「凌〜!」
モデルまがいの謎にスタイルが良い美女。圧倒されている私に目をくれることもなく、その女は凌の腕にまとわりついた。
「だーれ、このひと?」
「あぁ、ごめん。こちらクライアントの畑田さん」
畑田さん、と急に上の苗字で呼ばれ、私は慌てて頭を下げる。
「こんにちは、真帆です」
「あ、どうも」
その笑顔が上から目線に思えたのは気のせいだろうか。鼻にかかった声も鬱陶しい。
だが一番悔しいのは、女として“完敗”と認めざるを得ないことだ。
ピカピカのお肌に、こぼれ落ちそうなほど大きな瞳。この寒いなかでも素足なのか、ミニスカートから覗く足は細くて、そしてどこまでも長く真っ直ぐに伸びている。
私もそれなりにイケてると思っていた。
大学時代は可愛い子しかいないことで有名なテニスサークルに入っていたし、学歴もある。会社名も皆が知っているような、渋谷の有名企業。
全てそれなりにイイ感じだと思っていたのに、今まで積み上げてきたものは、女として正解ではなかったと急に現実を突きつけられた気がしたのだ。
真帆と柴崎、プライベートでも近づくといいな😊
気付けて良かったけど、最後にティンカーベルとか言ってる時点でまだ夢見てる感じがしてちょっと心配になっちゃうわ笑
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