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  • 「何、このニオい…?」夫とのハグに違和感を覚える女。夫婦の危機を救った、意外なモノとは



    「桜子さん、私、この前佑人にハグをしたら、ちょっと気になることがあったんです」

    表参道にある会社近くのカジュアルイタリアン。オープンテラスの明るい日差しの中にもかかわらず、暗い表情で恵麻はため息交じりに切り出した。

    「え、どうしたの?」

    会社の先輩・桜子はランチの後のカプチーノを飲みながら、恵麻を心配そうに見つめた。

    佑人と出会った食事会を主催してくれたのが桜子で、佑人のことも知っている彼女は、夫婦の相談までできる存在だ。交友関係が広く遊びも仕事も余裕があるように見える桜子。いつもおしゃれで、鮮やかなワンピースもオフィスで自然に着こなす彼女はみんなの憧れだ。

    ただ、そんな桜子にも、佑人の匂いが気になった、なんてなんだか恥ずかしくて正直には言えず、恵麻は言葉を濁しながら相談した。

    「ハグをしても、なんかしっくりこないっていうか。それに新婚なのに会話も少なくて、このまま倦怠期まっしぐらかも、なんて考えると憂鬱で…。桜子さんたちは、今でもラブラブですよね」

    「そうね。今でも、週末はデートしたりするよ」

    当たり前のように言葉を弾ませる桜子に、恵麻は恐る恐る尋ねた。

    「あの…その、仲のいい秘訣って、何かあるんですか」

    「うーん、しいて言えば、夫と出かけるときでもキレイでいることを心がけてることかなぁ」

    整えられたネイルで、艶のある髪をかきあげながら答える桜子に、恵麻は「なるほど…」と妙に納得する。

    「そっか。私は見ての通り手抜きで。平日は仕事、休日も友達とご飯に行く約束を入れることが多くて、あんまり自分のために使う時間ってないかも。だからですかね…」

    「私も忙しいのは同じよ。もしかしたら、時間のやりくりの仕方が違うのかもね」

    「やりくり、ですか?」

    恵麻が繰り返すと、桜子は大きく頷いた。

    「例えば、家事を減らすために時短家電を揃えたり…食洗器に掃除ロボットはもちろん、クリーニングの頻度が少なくて済むように『LG styler』を買ったの」

    『LG styler』?何ですか?それ」

    「衣類を入れておくだけで、シワや匂いをとってくれる、魔法の家電よ」

    その家電について話す桜子は、なんだか楽しそうで、恵麻も途端に興味が湧いてきた。それに…

    「匂いと言えば…実はこの前、佑人のスーツからタバコと焼肉とか、皮脂の匂いがまざったような、嫌な臭さを感じたんですよね…」

    その告白に、桜子はプッと噴き出した。赤くなる恵麻をフォローするように、桜子は柔らかに微笑みかける。

    「だったら、今度の週末にでも、佑人くんと家に遊びに来ない?ちょうど美味しいワインが手に入って、誰か誘おうと思っていたの。そのとき 『LG styler』を見せてあげるわよ」

    「え、いいんですか?佑人にも予定聞いてみます!」

    幸い週末は佑人も空いていると言う。二人での久々のお出かけに、恵麻は心を躍らせるのだった。

    ―そして週末ー


    「まだ?そろそろ出かける時間だよ」

    約束の時間になっても準備ができていない恵麻を、佑人がイライラしながら待っている。

    「ちょっと待って。お気に入りのワンピがシワシワなの」

    恵麻は別のワンピースに慌てて着替え、ファーがついた高価なコートを1年ぶりにクローゼットの奥から取り出し、羽織って家を出た。

    すぐに二人でタクシーに乗り込むも、ドアが閉まるなり佑人は眉をひそめた。

    「ウッ…このコート、クローゼットの中の匂いがする」

    「もう、わざわざ指摘しなくてもいいじゃない!」

    デリカシーのない佑人に恵麻はカチンときて、思わず強い口調で言い返す。

    しかし、ふと落ち着いてコートの匂いを嗅ぐと、確かにその通り。それに、ファーもしなっている。

    ―どうしよう。桜子さんに引かれちゃう…。

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