SPECIAL TALK Vol.73

~半導体もワインも同じものづくり。異色の二本柱で挑戦していきたい~

2020年のニューリーダーたちに告ぐ

近年、日本では小規模なワイナリーが増え、ワインの質も着実に向上している。

強いこだわりを持つ特徴的なワイナリーが数多く出現するなかでも、特に異彩を放っているのが、松坂浩志氏が代表を務める「MGVsワイナリー」だ。

半導体製造工場をワイナリーに改装し、ワイン造りに携わるのも元々は半導体に関わっていた技術者たち。

松坂氏は半導体メーカーの社長でもあるが、変化が速く、資本力がものを言う半導体の世界とはビジネスのやり方がまったく異なる、ワインの世界でも挑戦を始めた。

グローバル社会と言われる現代で、次世代のニューリーダーは何を武器に戦えばいいのか。ローカルにこだわったワイン造りに挑む松坂氏の姿勢から、そのヒントが見つかるだろう。

松坂浩志氏 MGVsワイナリー代表。

山梨県出身。大学卒業後、大手物流企業のシステム系企画開発を経て、半導体製造を手掛ける塩山製作所に入社。1998年、40歳で同社社長に就任。2017年、勝沼地区の工場をワイナリーとしてオープンし、同年、日本ワインコンクールで銀賞・銅賞を受賞。地域にこだわったワイン造りを通じて、文化の発信と長期的な人材育成を目指している。

金丸:本日はMGVs(マグヴィス)ワイナリーの代表、松坂浩志さんをお招きしました。お忙しいなか、ありがとうございます。

松坂:こちらこそお招きいただき光栄です。

金丸:対談の舞台は西麻布の『日本料理 ときわ』です。ミシュランで一ツ星を獲得した銀座『馳走 啄』が、今年6月、装いも新たにスタートを切りました。〝啄〞はひな鳥の孵化に由来する言葉ですが、誕生をイメージさせる店名から永久不変を意味する店名になり、日本料理一筋40年の料理長による、旬の素材をふんだんに生かした料理が味わえます。

松坂:日本料理を引き立てるワイン造りが私の目標の一つです。MGVsのワインを持ってきていますので、ぜひ料理と合わせてみてください。

金丸:ありがとうございます。こうやってお会いするのは初めてですが、ワイン好きの友人たちから「面白いワイナリーがある。早く松坂さんと対談したほうがいい」と急かされていました(笑)。

松坂:そうでしたか。ありがたいことです。

金丸:松坂さんはもともと、半導体メーカーの社長でいらっしゃいますよね。

松坂:今もそちらが本業で、山梨県甲州市の「塩山製作所」という会社です。工場が市内に2ヶ所あったのですが、本社工場はそのままにし、勝沼にある工場を2017年にワイナリーに転換して、ワイン事業をスタートさせました。

金丸:半導体とワインという異色の組み合わせが面白いですね。

松坂:私自身、もともとワインが大好きで、委託醸造でプライベートワインを造っていました。だから参入するときはいろいろな方から「趣味ですか?」と聞かれまして。

金丸:道楽でワイン造りに乗り出す経営者もいますから。

松坂:社員たちも「社長はいずれワイナリーの経営をやりたいのでは……」と内心思っていたようですが(笑)。

金丸:では「やっぱり!」と感じた社員も多かったでしょうね。

松坂:ただ、あくまで本業は半導体。当時、半導体部門が縮小していただけに、ワイン事業に重心を移すと思われないよう、株主、従業員ともに説明を行い、理解してもらえるよう努めました。

金丸:半導体メーカーという独特な背景を持つだけでなく、事業開始早々に、日本ワインコンクールで銀賞・銅賞を受賞されるなど、非常に注目されています。かつて栄華を誇った日本のものづくりは現在苦境に立たされていますが、松坂さんのお話から、その苦境を脱するためのヒントを見つけたいと思います。今日はよろしくお願いします。

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