たかが離婚、されど離婚 Vol.4

「まさか妻が、1年前からこんなコトを…」別居中の妻が、夫に秘密でしていた行為とは

「ちょっと寂しいけど、将人がそういうなら何か考えがあるんだよね」

別居の申し出を受けてもなお、真由子は笑顔だったのだ。てっきり泣いたり怒ったり、感情をぶつけられることを覚悟していた将人は、戸惑ってしまった。

「連絡くれるの待ってるね」

その言葉どおりこの1年、一度も連絡してこなかった。あの時の返答も表情も、その後の対応も、将人にとって想定外のことだらけだ。

―真由子は、一体どういう気持ちなんだろう?

ずっと疑問に蓋をして、考えないようにしていた。その蓋を取り去る決意をしたのは、同級生・友梨の言葉がきっかけだ。

「結婚って他人と向き合うことだと思う」

真由子の気持ちをきちんと聞きたい。将人はそれだけを考え、待ち合わせ場所へと向かった。



真由子が指定した『プティ バトー』は、前から行ってみたいと思っていたフレンチだ。カウンターだけのこの店は、偶然にも将人の別居先マンションの近くだった。

店に入ると、一番奥のカウンターで真由子が手を振った。

将人も片手を上げ、そちらに向かう。

「店の前を通りかかった時から、入ってみたいと思っていたんだ」と口がすべりそうになり、慌てて口をつぐむ。真由子には今の住所を伝えていないから。

「何か言いかけた?」

小首をかしげながら真由子が聞き返す。1年前よりも少し痩せただろうか。美しさは変わらないままだった。

「ああ…。雰囲気良いお店だねって言おうとしたんだ」

「最近知ったの。…将人、1年前よりもカッコよくなったね」

店を一人で切り盛りしているシェフに、真由子と同じシャンパンを注文してから、将人は答える。

「そう?真由子も前よりも綺麗になったよね」

真由子は、シャンパンを口に運びながら微笑む。細い指が華奢なグラスとマッチしていた。その指には結婚指輪が光っており、普段指輪を外している将人はちょっとした罪悪感を覚えた。

「将人にそう言ってもらえるの、嬉しいな。ちょっとダイエットしたんだ」

「しなくても十分綺麗なのに」

「もう。本当にそう思ってるなら、早く家に帰ってきてよ」

ぎくりとした。将人の心中を知ってか知らずか真由子は、以前と変わらぬ様子で微笑みを浮かべている。

「なんて冗談。将人から連絡もらえて嬉しかったよ」


そこからは、お互いの近況について話した。

将人は現在の時節においても、社会のインフラを自負する大手銀行は活発に動いていること、ステイホーム中にはリモートで同窓会をしたことなどを話した。

そこで友梨と再会したと告げると、真由子は「懐かしい〜!」とはしゃいだ。真由子から見れば......


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