2020.09.19
SPECIAL TALK Vol.722020年のニューリーダーたちに告ぐ
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の題字を担当したのは、国内だけでなく、海外でも注目されている書家の中塚翠涛氏だ。
テレビ番組の題字、ドラマの書道監修、バラエティ番組への出演など多方面で活躍するが、「何が自分に合っているかを知るために、新しい経験や体験も恐れずに挑んできた」と語る。
長い歴史を持つ「書」を“立ち返る場所”と表現する中塚氏は、どのように書と出合い、どのような経験を積み重ねてきたのか。また、誰もが一度は「書道」を経験する日本において、書道教育はアート教育たりうるのか。
中塚氏の歩みを振り返りながら、日本人とアートのよりよい関係、それを構築するために必要なものは何かを探る。
中塚翠涛氏 岡山県出身。4歳から書に親しみ、古典的な書法を修得。筆の弾力と墨の無限のグラデーションに美しさを見出し、和紙と墨のみならず、陶器、ガラス、映像など、幅広い手法で独自の表現を追求。2016年12月にパリ・ルーブル美術館の地下展示会場「カルーゼル・デュ・ルーブル」で開催されたSociete Nationale des Beaux-Arts 2016では、約300㎡の空間に書のインスタレーションを発表し、「金賞」「審査員賞金賞」をダブル受賞。ユネスコ「富士山世界遺産」、映画『武士の献立』など多数の題字を手がけ、2020年大河ドラマ『麒麟がくる』も担当。『30日できれいな字が書けるペン字練習帳』(宝島社)シリーズは、累計400万部を突破。
金丸:本日は書家の中塚翠涛さんをお招きしました。
中塚:お招きいただきありがとうございます。
金丸:今日は『銀座 鮨青木』の2代目、青木利勝さんが今年新たにオープンした『離』をご用意しました。月替りのテーマに沿って、青木さんのこれまでの経験をすべてつぎ込んだ独創的な料理をいただけます。魚はお好きですか?
中塚:はい。魚も肉も野菜も(笑)。お鮨も楽しみです。
金丸:今、中塚さんは国内だけでなく、海外でも活躍されています。最近ではNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の題字を担当され話題になりましたね。
中塚:「1年間続く物語と桃山時代を5文字に託してください」と壮大な依頼をいただきました。
金丸:時代そのものを字で表現するって、ものすごくレベルの高い要求ですね。
中塚:スタッフの方それぞれに思い入れがあって、それをどう表現するか、一緒に悩みながら作り上げました。最初にお見せしてから、最終的な題字ができあがるまで3ヶ月ほど、毎日のように書いていましたね。
金丸:今はコロナ禍という状況なので、海外での活動は難しいと思いますが。
中塚:でも、こういう状況だからこそ制作に集中しています。想像力を膨らませたくて、あえて古典的な勉強をしたり、実際には旅に行けないので、頭の中で妄想旅行をして外国の情景をイメージしたりしながら制作活動に励んでいます。
金丸:アーティストならではの過ごし方ですね。中塚さんは書道の指導もなさるんですか?
中塚:この期間中、知り合いのお子さんをオンラインで指導しました。以前はパソコンの画面越しに指導するなんて想像もしませんでしたが、意外にオンラインのいいところもあり、決められた時間内のお子さまたちの集中力に驚きました。
金丸:友達同士でふざけ合うこともできませんからね(笑)。
中塚:字の練習というよりは、線の練習がメインで、虹や雷さま、雲の線を毎回必ず描きます。親御さんからすると「お絵かきの時間じゃないのに」と思われるかもしれませんが、筆の持ち方と姿勢は必ず気を付けて、なぜそれが必要か、毎回お子さま自身に答えていただきます。そして、楽しい絵を描いているうちに、どんどん線がきれいになっていくんです。またその絵から似ている平仮名を探していくとお子さまの反応が劇的に変わり、上達しました。
金丸:それは面白い。上達が実感できれば、ますます楽しくなるでしょうね。私は日本の芸術教育や、日本人とアートの距離に違和感を持っています。本来、アートは人生を豊かにしてくれるもののはずです。中塚さんとお話しするなかで、日本とアートの未来についても考えることができればと思います。よろしくお願いします。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
- FREE
2021.04.21
Vol.79
~枠にとらわれず、やりたいことをやる。アートと科学の融合で夢想した未来を現実に~
- FREE
2021.03.19
Vol.78
~やりたいことがやれる人を増やす。自動収穫ロボットで農業を変え、世界を変えたい~
- FREE
2021.02.20
Vol.77
~自分の目で現地の状況を見て、伝える。興味の赴くまま、自分にできることを見つけてきた~
- FREE
2021.01.21
Vol.76
~フィットネスは、何歳からでも遅くない。人生を好転させるほどの楽しさを伝えたい~
- FREE
2020.12.21
Vol.75
~あらゆる分野と繋がるワイン産業から日本の問題点を洗い出す~
- FREE
2020.11.21
Vol.74
~この体だからこそできることをやりたい。逆境を覆しつづけてきた自信が、次なる挑戦に繋がる~
- FREE
2020.10.21
Vol.73
~半導体もワインも同じものづくり。異色の二本柱で挑戦していきたい~
- FREE
2020.07.21
Vol.70
~「地元産にこだわるから個性が出る」世界中で学んだ技術で日本ワインを進化させたい~
- FREE
2020.06.19
Vol.69
~「やりたいことを、まずはやる」真っ直ぐな熱量があったから今がある~
- FREE
2020.05.21
Vol.68
~故郷に職人のエデンを作りたい。世界一の庭師として次に挑むものがある~
- FREE
2020.04.21
Vol.67
~ネガティブなマインドでは何も勝ち取れない。自分を信じ通すことが、勝負強さの鍵になる~
- FREE
2020.03.21
Vol.66
~「やるべきことを、時間をかけて丁寧に」。多分野での挑戦を経て見えてきたものがある~
- FREE
2020.02.21
Vol.65
~「お金がない」と可能性を諦めないで、挑戦があふれる社会を目指したい~
- FREE
2020.01.21
Vol.64
~30年間、見続けてきたから日本はもう一度輝く、と信じている~
- FREE
2019.12.21
Vol.63
~信用するけど、頼らない。独自の経営哲学で日本の外食を変革してきた~
- FREE
2019.11.21
Vol.62
~少しだけはみ出してみたい。その好奇心が斬新なデザインを生んだ~
- FREE
2019.10.21
Vol.61
~目標は「甘い地球を作ること」。枠にとらわれず、スイーツを武器に挑戦を続けたい~
- FREE
2019.09.21
Vol.60
~自分と他人との境界線をどう越えていくか、その先に世界平和があると信じている~
- FREE
2019.08.21
Vol.59
~“当たり前”に風穴を開けて、世の中を最適化し続けてきた~
- FREE
2019.07.20
Vol.58
~自分のなかの「やりたい」に正直に生きる。それが“新しい”を作る原動力になる~
- FREE
2019.06.21
Vol.57
~皆が喜ぶ状況をつくる、そのシンプルな想いが埋もれている個人と企業をつなぐ事業を生んだ~
- FREE
2019.05.21
Vol.56
~制約がバネに、逆境が燃料になるということを、自分の人生を通じて証明したい。~
- FREE
2019.04.20
Vol.55
~「目標を立てて、必死に努力する」。苦境を突破する術をスポーツが教えてくれた~
- FREE
2019.03.20
Vol.54
~フランスパンを日本の食文化に、その挑戦に自分のすべてを捧げたい~
- FREE
2019.02.21
Vol.53
~「自分の目で確かめたい」。だから周りを気にせず駆け抜けられた~
- FREE
2019.01.21
Vol.52
~日本とバングラデシュ、一方的な支援ではなく、双方の課題解決を~
- FREE
2018.12.21
Vol.51
~自分たちの力で業界を変えたい、そんな思いで医療の世界へ飛び込んだ~
- FREE
2018.11.21
Vol.50
~「どうなりたいか」ではなく「何ができるのか」。豊かな海を取り戻し、未来に引き継ぐために~
- FREE
2018.10.20
Vol.49
~コンピュータから生物学へ。自分の出番を見極めたから、ここまでこられた~
- FREE
2018.09.21
Vol.48
~VRによる体験がガラパゴス化した医療を変えていく~
おすすめ記事
- FREE
2020.08.21
SPECIAL TALK Vol.71
~とどまることは、衰退を意味する。尺八を武器に世界を目指したい~
- PR
2021.04.19
全長100キロの“福島フルコース”に出かけたら、上質な「エクストレイル」に魅了された!
- FREE
2015.01.26
あの「スタートアップ」経営者のここぞのチカラ飯 Vol.2
若手スタートアップ経営者たちのパワーの源
20代から30代前半の伸び盛りのスタートアップ経営陣。どんなチカラ飯を食べてサ...
2017.02.24
TBS&博報堂社員に聞いた、赤坂でリアルに通う名店8選
- PR
2021.04.22
横浜デートは中華だけじゃない!馬車道に、大人をしっかり満たす注目の鮨店があった
- FREE
2015.01.26
あの「スタートアップ」経営者のここぞのチカラ飯 Vol.1
IT長者たちのチカラ飯
30代後半から40代と、スタートアップ業界の中ではベテランに入る経営者たち。彼...
- FREE
2015.02.02
食べログ3.2以下でも間違いなく名店!
充実した割烹が4,500円!『枝魯枝魯(ギロギロ)』(神楽坂)食べログ3.11
色気漂う、大人のエリア・神楽坂で食す魅惑の“くずし割烹” ※ポイントは201...
2015.08.10
話題の企業の仕掛人たちがリアルに通い詰める常連店8選
- FREE
2016.07.20
有名企業の役員も御用達! 接待を成功に導くレストラン5選
2016.10.17
彼が言うなら間違いない!松岡修造が伝授する“デキる人”になるための10ケ条
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
- FREE
2021.04.11
男と女の答えあわせ【A】
「彼女のテクニック、間違いだらけでウンザリ…」たった2回で男の気持ちが冷めた、女の行為
- FREE
2021.03.28
明日、世界がおわるなら
彼氏じゃない男と迎えた朝。女のスマホに届いた、恐ろしすぎるLINEメッセージの内容とは
- FREE
2021.04.02
マテリアル夫婦
「ここだけの話、妊娠してから夫と…」鬱屈した27歳女が、思わず漏らした本音
- FREE
2021.04.03
男と女の答えあわせ【Q】
「え…なにこれ?」意中の男の家の洗面所で、女が見つけてしまった衝撃的なモノとは
- FREE
2021.04.14
私たち、出逢わなければよかった
婚約破棄した元カレの実家に、ノコノコ足を運んだ女。そこで目を疑う光景に遭遇し…。
- FREE
2021.04.01
23区のオンナたち
30歳女が“すっぴんマスク”で買い物に行ったら、元カレと鉢合わせ。彼の隣には女がいて…
2021.04.13
男女の賞味期限
「やっぱり、アレは必要…」互いを男女として見れなくなった夫婦が気づいたコト
- FREE
2021.03.29
男と女の怪談~25歳以下閲覧禁止~
「聞かなかったことにしよう…」偶然知った親友の夫が抱える秘密。女の判断ミスが招いた悲劇とは
2021.04.04
悪い女
「私の部屋で、コーヒーでも飲んでから帰りません?」美女社員に迫られた社長は…
- FREE
2021.03.28
夫の寵愛
「こんなところで何してるの?」3日間音信不通だった夫を、妻が偶然見かけた意外な場所